近年、加速的な少子化は、子どもとの接触体験の減少を引き起こし1)、本学での共通総合科目の中の「保育園実習」を履修する学生も、類似の状況にある。当該科目は、昨年来、履修希望学生が多く、保育士や幼稚園教諭への志向性や、子どもへの関心が高い。子どもとの接触体験が、職業志向性・学習意欲の向上や子どもとの関わり方へ与える影響について示唆を得ることは、学習の推進を検討する一助として期待される。
本研究の目的は、共通総合科目「保育園実習」に子どもとの接触体験を取り入れ、実習前後の大学生が抱く子どもに対するイメージの変化を明らかにすることである。
東京都内の大学の2014年度当該科目履修学生のうち、研究協力が得られた20名を対象とした。
実習内容は、平成26年10月~11月に、東京都近郊の保育園(園児数130人)の保育活動(遊びや食事など)へ1日5時間程度の参加をし、子どもとの接触を体験することであった。
最終講義(第15回目)の際に、10分程度、集合法による無記名の自記式質問紙調査を実施した。
調査項目は、子どもに対するイメージや捉え方の変化など、4項目から構成した。
回収された18名を解析対象とした。定量的には、各回答の文字数をWilcoxon検定、また、定性的には、各回答内容のキーワードを抽出し、澤田ら2)の結果を参考に分類し、実習前後の変化を検討した。
なお、統計学的有意差の検定には、MicrosoftOfficeExcel2013の分析ツールアドインであるデータ分析を使用し、有意水準は5%とした。
本研究は、創価大学人を対象とする研究倫理委員会の承認後に実施した。
実習前後の回答の平均文字数は、実習前が52.9(±37.75)文字、実習後は、94.78(±44.55)と40文字以上増加した(p<0.001)。
子どものイメージについて、記述が多かったのは、実習前は、守るべき存在・世話が必要・可能性を秘めている・素直・自由、といった表面的なものであった。実習後は、成長する存在・意欲的というキーワードが加えられ、素直・自由・守るべき存在という言葉を書いた者はいなかった。世話が必要・可能性を秘めている、と記述した者は、実習前より減少した。
本研究において、子どもとの接触体験の前後により、履修学生の子どものイメージに変化がみられた。
記述量が顕著に増加し、子どもに対する学生の理解が深くなったあるいは広くなったことが示唆された。子どものイメージに関する内容では、実習前は、表面的であったが、実習での接触体験により、子どもの内面的、あるいは成長という視点が加わった。これらは、学生自身の成長につながる可能性もうかがえ、共通総合科目としての意義も期待したい。
以上のことから、子どもとの接触体験を取り入れた実習科目は、大学生が持つ子どものイメージの変化とともに成長の糧となる可能性が示唆された。
なお、本研究の課題は、さらに対象者数を増やし、学習効果や質の向上について明確化することである。
本研究では、子どもとの接触体験を取り入れた「保育園実習」科目を履修した学生を対象として、子どもに対するイメージについて実習前後の比較検討をした。実習によって、子どもに対するイメージが広くなり、表面的なものから内面的あるいは成長という視点へ変化することが示唆された。
≪文献≫
1)子どもの成長環境分科会:提言 我が国の子どもの成長環境の改善にむけてー成長時間の課題と提言―.日本学術会議.2013.
2)澤田英三・上手由香他:保育体験は女子大学生の子ども観・子育て観をどのように変えるのか?.安田女子大学紀要.41 103.114 2013.
キーワード:子ども、接触体験、成長