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創価大学教育学会>書庫>2014年 第13回大会研究発表抄録
研究発表B-4

ゆさぶり発問を効果的に投げかけるための手続きの考察
 (子どもの発言における相互関連性の分析を通して)

矢野淳一(静岡県函南町立東小学校)

1 研究の背景

落合(1976)は、ゆさぶり発問について「『ゆさぶり』とは、子どもの常識的な解釈や、集中・緊張の欠けた平板な授業展開に問題をなげかけ、授業の流れの中に変化をもたらし、緊張関係をつくりだす教師の多様な働きかけを統一的に把えるための概念である。このゆさぶりをひきおこすような発問であるといえる。」と述べている。

青木(1976)は、「発問は、多くの場合、授業の過程において、即時的に、もち出されることが多い。それは、発問の持つ一つの特性といっていい。であるから、発問は、それを子どもの学習の中に、持ち出すタイミングによって、そのはたらきが大きくかわってくる。とすると、発問には、作ることの難しさと、それを使う(生かす)ことの難しさといったものがある。」が論じているようにゆさぶり発問は、作る難しさと共に、使うタイミングの難しさ、つまり教師の即時的な意思決定の困難さについて問題を提起している。

2 ゆさぶり発問を使うタイミング

青木(1976)は、「ゆさぶり発問の事例が数多く示されているが、その発問例の多くは、否定・対立の要素を持った発問であるといえる。」と述べた上で、更に吉本均氏を中心とする諫早の授業研究グループの人たちの実践研究に基づいた3種類のゆさぶり発問を挙げている。(表1)

表1 3種類の「ゆさぶり発問」のタイプ
限定発問子どもの思考を収束させ方向づけるための発問。
類比発問対比や比較を通してゆさぶる発問。
否定発問否定や矛盾を通してゆさぶる発問。

落合(1977)は、限定発問については、ゆさぶり発問というよりも否定発問と類比発問を効果的にするための役割が大きいとした上で、類比発問と否定発問について「この2種の発問は、別の視点をだすにしても、否定するにしても、生徒の視点に何らかの形で対立するものを与えることで共通している。」と述べている。更に、類比発問と否定発問の効果について実験的に検討した上で、「前の視点との間の比較、対立をひきだすためには、単に対立する立場を提出するだけではなく他の何らかの手続が必要であることを示唆している。」と問題を投げかけている。つまり、今村(1976)が「『ゆさぶり』発問は、教師が問いを発し子どもの心をゆさぶる行為であるから、教師は、子どもたちの思考の流れとか、動きに乗って、授業を展開していかなければならない。」と述べているように、授業中盤において単にゆさぶり発問を投げかけるのではなく、授業における子どもの思考の文脈に沿ってゆさぶり発問を投げかけることの重要性を述べている。

3 本研究の目的と方法

本研究の目的は、ゆさぶり発問を投げかける前にどのような手続きを行えばよいかを明らかにすることである。分析対象は、筆者自身が、担任した公立小学校2年生のクラス(32名)を対象に、国語「くま一ぴき分はねずみ百ぴき分か(学校図書)」(平成20年11月に実施)で実施した授業である。ICレコーダーとビデオを使って授業内容を記録し、授業の文字起こしを行った上で、子ども同士の発言の相互関連性を概念マップに整理した上で考察を加えていく。

4 結果と考察

子どもの意見において理由と根拠となる文を明確にすることにより、同じ文でも解釈の違いが浮き彫りになってくる。子どもが、互いの解釈の違いを理解することを通してゆさぶり発問が効果的に働くことが明らかになった。

キーワード:国語、文学教材、発問

≪参考文献≫
青木幹勇・今村資泰(1976)「国語科ゆさぶり発問」(明治図書)
落合幸子(1977)「視点の変換を促す発問の検討」教育心理学研究VOL.25,No4 pp.219-230