新学習指導要領において「思考力・判断力・表現力」育成が大きな着目点となっている。筆者は、それらを育むきっかけとして、子どもに答えを「選択」させる活動が有効なのではないかと考える。
また、筆者が勤めている兵庫県加古川市では『「ことばの力」育成プログラム』をもとに、言語活動に力を入れている。学校全体で育成していくための活動がいくつか紹介されているが、今回、注目したのが「異なった意見を出し合わせて問題を解決するような対話や討論を取り入れる」活動である。筆者の担当していた学級は、自分の意見を一方的に発言することはあるが、対話・討論を苦手としている子どもが多い。この課題を授業の中で少しでも解決できればと考えている。
本研究では、各時に子どもに答えを「選択(判断力)」させ、その答えを選んだ根拠を話し合わせる(表現力)活動を取り入れた。その一連の活動の中で「思考力」が育まれると考える。それらを育むきっかけとして、「選択」する活動が有効であることを示していくことが本研究の目的である。
方法は、筆者が平成25年度1学期に行った授業「ヤドカリとイソギンチャク」(東京書籍4年)を分析考察していくこととする。対象は、第4学年34名(男子20名、女子14名)である。板書やワークシート、子どもの発言などから、子どもが発問の答えを「選択」する活動により「思考力・判断力・表現力」がどう育まれるか検証していく。
筆者が取り組んだ単元指導計画を簡単に示す。
第一次・・文章の大意や大まかな構成をつかもう。
第二次・・段落相互の関係を考えよう。
第三次・・お礼の手紙を書こう。
次 | 時 | 子どもの活動 |
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第一次 | 第1時 | ・全文を読む。 ・いくつの実験・観察が紹介されているか討論する。 |
第二次 | 第2時 | ・1~6段落を読む。 ・1~6段落の〈問いの文〉と〈答えの文〉に整合性があるか討論する。 |
第3時 | ・7~9段落を読む。 ・〈問いの文〉と〈答えの文〉の整合性から、「ヤドカリが、イソギンチャクにさされることはないのでしょうか」は〈問いの文〉なのかを討論する。 | |
第4時 | ・10~12段落を読む。 ・ヤドカリとイソギンチャクの関係を考え、「10段落と11段落は必要か」を討論する。※1 | |
第三次 | 第5時 | ・全文を読む。 ・お礼の手紙を書き、内容をまとめる。 ・書いたお礼の手紙をもとに交流する。 |
以下の2点が本研究の成果としてあげられる。
①選択肢を与えた結果、漠然とした答えにならないため、自分なりの根拠を明確に書いたり発表したりすることができた。
②選択肢があることで、自分や相手の立場が分かりやすく、討論しやすい環境になった。
「選択」の活動が、すべての教材に当てはまるとは考えていない。「選択」以外にも子どもの「思考力・判断力・表現力」を育むきっかけとなる活動を考えていき、提案する必要があると考える。
また、今回は説明的文章教材で取り組んだ。今後は、文学的文章教材にも積極的に取り組んでいき、どの教材においても「思考力・判断力・表現力」を育めるよう実践を積み重なることが、教師経験の浅い筆者の課題の一つである。
キーワード:思考力・判断力・表現力、選択
≪参考文献≫
※1 「文学・説明文の授業展開 全単元 小学校中学年」、長崎伸仁 他編、2012年、学事出版