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創価大学教育学会>書庫>2014年 第13回大会研究発表抄録
研究発表A-1

大学生における楽観性とストレスへの対処法の関連

辻井久敏(教育学部教育学科4年)

はじめに

近年、大学生における休学者・退学者の数が増加傾向にある。勉学意識の減退や喪失、単位不足などといった消極的理由が半数を超え、「ひきこもり」や「不登校」といった非社会的な行動が問題となってきている。その原因の一つとして大学生が日常的に経験する心理的ストレスが挙げられる。このことから大学生の健康的な学生生活を支援するために心理的ストレスに関する研究が多く行われてきた(たとえば、木村ら,2003など)。

ストレスに関して田邊と堂野(1999)はネガティブストレスイベントとストレス反応、個人の性格との関連について報告している。このようにストレスを感じるような悪い出来事とその対処に関しては今までにいくつもの報告がされている。さらに近年では外山・桜井(1999)のようにネガティブな出来事に限らず、日常における良い出来事(デイリーアップリフツ)とストレス反応の関連などポジティブな側面について関心が高まっている。

そこで今回の研究では、小林・豊田・沢宮(2002)を参考に大学生の日常における出来事とストレス反応の関連、大学生個人の持つ楽観性とそのストレス対処への関連性について調べ、大学生一人ひとりがうまくストレスと付き合っていくこと、またより良い生活を送ることに寄与することを研究の目的としたい。

1 調査方法

1.1質問紙

(1)学年、年齢、性別を記入するフェイスシート、(2)日常的出来事尺度(外山・桜井,1999)、(3)原因帰属簡易尺度(自己理解ワークブックより)、(4) コーピング尺度(尾関,1993 心理測定尺度集より)を組み合わせた質問紙を作成した。

1.2対象

創価大学・教育学部生232名(男86名、女146名)に上記の質問紙を用いて調査を行った。

2内容

日常的出来事尺度を「自己に関するネガティブな出来事」、「対人関係に関するネガティブな出来事」、「大学生活に関するネガティブな出来事」、「私生活に関するネガティブな出来事」、これらを合計した「ネガティブな出来事の合計」、「自己に関するポジティブな出来事」、「対人関係におけるポジティブな出来事」、これらを合計した「ポジティブな出来事の合計」の項目に分け、原因帰属簡易尺度を「プラスの出来事における楽観度」、「マイナスの出来事における楽観度」、これらを合計した「総合的な楽観度」に分け、コーピング尺度を「問題焦点型」、「情動焦点型」、「問題+情動焦点型(回避・逃避型以外)」「回避・逃避型」に分け、以上のすべての項目同士の相関係数を測った。

また「総合的な楽観度」の項目が平均値以上の回答者のみを抽出同じようにすべての項目において相関係数を測った。

3 結果

操作の結果、現在のところ「自己に関するポジティブな出来事」と「問題+情動焦点型」との有意な相関(r=.438、p≦.01)、また楽観度が平均より高い者はその相関(r=.444、p≦.01)が強くなることが分かっているが、詳細に関しては当日発表する。

キーワード:日常のポジティブな出来事、ストレス対処、楽観度

≪参考文献≫
・木村愛・小林正幸・松田修 2003 大学生のストレス過程に関する検討―認知的評価と個人内容員に注目して― 東京学芸大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要,27,27-40.
・田邊敏明・堂野佐俊 1999 大学生におけるネガティブストレスイベントと対処行動の関連:性格類型およびストレス認知・反応を通した分析 教育心理学研究,47(2),239‐247.
・外山美樹・桜井茂男 1999 大学生における日常的出来事と健康状態の関係―ポジティブな日常的出来事の影響を中心に― 教育心理学研究,47,374‐382.
・小林正幸・豊田幸恵 沢宮容子 2002 楽観性が心理的ストレスに与える影響について:日常的な出来事との関連から― 東京学芸大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要,26,87-100.
・福島脩美 "第4章 原因についての楽観的・悲観的な考え方"自己理解ワークブック 金子書房,2005,p.41-50.
・堀洋道監修 "コーピング尺度"心理測定尺度集 Vol.3,サイエンス社, 2001,p.23-26.