創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2014年 第12回大会口頭発表抄録
口頭発表D-2

国語科における複線型授業の展開例と有効性を探る

谷口 愛(創価大学教職大学院 教職研究科)

Ⅰ研究の背景

本研究は、テーマ「国語科における複線型授業の展開例と有効性を探る」のもと、国語科の授業の中で、児童の論理・根拠に基づく表現力の育成、確実な読解リテラシーの育成に重点を置き、興味・関心を引き出し学習意欲を高め、児童の学びが児童主体のもとできるよう「複線型授業」の可能性を探り研究した。

Ⅱ研究の目的と問題の所在

本学・創価大学教職大学院の60日間の研究実習の中で国語科の「複線型授業」によって、子どもの学習への意欲や読解力の向上につながるのではないかと仮説を定めて、従来の単線型授業の読解と複線型授業の効果や違いに視点を向けて取り組んだ。

また、第3次の表現活動に活用されつつある複線型授業が第2次の読解の過程においても可能かどうかを探るとともに、「複線型授業」の活動を教材の特性を生かしながら設定した授業を試みた。

複線型授業のねらいとして目標としたものは以下の点である。

子どもの興味や学力に合った教材の選択による学習意欲の向上・読解の深まりを通して確実な読解リテラシーの育成、授業・学習の活性化、第二次や第三次の学習活動の活性化、時間や学習の効率化が挙げられる。

長崎伸仁は雑誌論文「国語科の複線化授業を志向する」の中で、複線型授業のねらいについて次のように述べている。

つまり、子ども自身が自分の興味や学力に合わせて教材や学習内容を選択し学習に取り組むことにより、子どもの自主性が尊重され、学習意欲へとつながり学習内容を自力で確実に獲得できる子どもを目指していきたいからである。

Ⅲ授業の展開例の提案

「世界遺産白神山地からの提言(教出5年下)」実践事例より

第二次の読解時に、Aのクラスでは2つの文章「ブナの森が支える豊かな自然」「白神山地の自然保護―緩衝地域の役割―」を題名のみ提示しどちらかの文章を選択させ、2つの教室に分かれて授業を同時並行で実施した。その後、1つの教室で白神山地についてわかったことを共有しあう時間を設けた。Bのクラスでは2つの文章を従来の1つの教室で順番通り授業を実施した。

この2つのクラスでは単元の最後に行う単元テストにおいて、Aのクラス、つまり複線型授業の方のクラスの平均点が高く、読解の理解度がBのクラスより高いことが分かった。

教材の特性を生かしこのような複線型授業を行うことで、子どもの学習を促していくことができると考えられる。

Ⅳ今後の課題

以下の2点が今後の課題である。
(1)複線型授業の有効性と読解リテラシーの育成のつながりを、教材研究・授業実践を通しさらに関連つける。
(2)文学教材、説明文教材の他、書くこと・言語事項においても複線型授業の有効性があるのか探っていく。

キーワード:複線型授業、習意欲の向上、読解リテラシー