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創価大学教育学会>書庫>2014年 第12回大会口頭発表抄録
口頭発表D-1

『推理式指導讀方』における内容推理式問題に関する考察
 ―尋常小学校5年生説明的文章「アメリカだより」の分析―

古澤 由紀(創価大学教職大学院 教職研究科)

Ⅰ研究の背景

本研究は、平成25年創価大学教職大学院の授業、「人間教育事例分析(担当:吉川)」において、戸田城外著『推理式指導讀方』(以下、指導讀方)を解明する上で川島清の「解析論考戸田城外著『推理式讀方』」、土居正博・荒井英樹の「『推理式指導讀方』(戸田城外)に基づく説明文教材研究の視点抽出の試み」を考察し、昭和12年に使用された尋常小学校5年生で用いた読本教材の「アメリカだより」を中心に分析を行い、指導讀方の「内容推理式問題」(以下、内容問題)に着眼点を置き研究をしたものである。

Ⅱ研究の目的と問題の所在

川島清の研究では、当時用いられていた読本教材「吉野山」の解析を題材とし、〈分段研究〉〈語法〉〈形式探究〉〈参考文〉の項目がいかに本文との合理性を有しているかを論じており、現代の教科書ガイドとの比較を通して検証している。また、土居・荒井の研究では、川島の研究をもとに、戸田城外の「説明文教材研究の視点」を明らかにしようとし、尋常小学校5年生の説明的文章教材「飛行機の発明」と「国語の力」と指導讀方の解説を照合し川島論文の分析の仕方を参考にしながら教材研究の視点を解明している。

これらの研究を踏まえ、本研究では、推理式指導読方における内容推理式問題が教材文の分段の研究からどのように出題されているか、そして教材文の指導に軽重がつけられているかを分析する。また、指導讀方が現代のPISA型読解力、および学力・学習状況調査(国語科)に通じる点があることを証明する。

Ⅲ説明的文章の特性に応じて

本研究では、説明文教材である「アメリカだより」の内容問題を重点的に調査した。

「アメリカだより」は、筆者が訪問した地域について手紙のような形式で書かれた文章である。ここで取り上げられている地域は「サンフランシスコ」「ロサンゼルス」「シカゴ」「ニューヨーク」であり、内容問題もこの地域に関する述懐における問題が列挙されている。内容問題においては、指導讀方の「文段の研究」で分類された文段の教材本文と照合し分析すると、全ての文段の内容から出題されていないことが判明した。 さらに、問題によってある文段からは複数の問題が出題されている。

◎サンフランシスコより
大問小問分段問題のタイプ
2人物の心情を問う問題
2文章中の情報を問う問題
2文章中の情報を問う問題
2文章中の情報を問う問題
2文章中の情報を問う問題
2人物の心情を問う問題
2指示語に関する問題

本研究では、その一部となる分段の研究で示されている「分段」、内容問題から戸田城外の教材研究の視点を分析し軽重をつける意図を探る。さらに、現代の国語で求められる力と結び付けていく。

Ⅳ今後の課題

以下の2点は今後の課題として挙げられる。
(1)『指導讀方』に関する歴史的研究の必要性
『指導讀方』の背景や『創価教育学体系』及び『愛児の優等化』との関連などに関する調査や考察が不足しているため、今後本学「創価教育研究所」と連携を図っていく。
(2)内容推理式問題と教材研究の関連性
戸田城外がどのような点に着眼し、そこから内容推理式問題の作成に至ったのかを解明し教材研究法と関連付ける。

キーワード:推理式指導讀方、内容推理式問題、説明的文章教材

≪参考文献≫
・戸田城外 (1938)『推理式指導讀方 巻九』日本小学館
・川島清 (2003) 「解析論考戸田城外著『推理式讀方』」『育英短期大学研究紀要』20,pp.25-41
・川島清 (2003) 「解析論考戸田城外著『推理式讀方』」、『創価教育研究』第2号pp.55-107
・土居正博・荒井英樹 (2012) 「『推理式指導讀方』(戸田城外)に基づく説明文教材研究の視点抽出の試み」