現在、東日本大震災のボランティア参加などの影響もあり、若者の社会貢献や社会参加が注目されつつある。しかし、実際にはボランティア活動等に積極的に参加する若者は限られたものである。また、活動参加の目的は大学における単位取得のためなど、社会貢献自体に対する意識の欠如や、一時的な支援で終わってしまうことが多々あるのが実情ではないかと私たちは考えた。そこで、宮崎研究室では、その原因の一端を探るため、創価大学生358名を対象に『若者の社会貢献に関する意識調査』を行った。その調査によると社会をよりよくしたいと考えている学生は98%を占め、学生のほとんどが社会貢献に対し、積極的に考えていることが分かる。その一方で、学生の中で社会問題を解決するための明確なビジョンを持つ数はその半数に限られ、実際に行動に移している学生は2割程度しかいないことが判明した。また、明確なビジョンを持ちながらも行動に移せない主な理由は①方法がわからない②きっかけがない③行動に移すほどのモチベーションがない、の3点が多くあがった。
この結果を踏まえると、社会に貢献したい、社会をよりよくしたいと考える若者は多く存在するが、解決手段が見つからず、実際に行動に移すまでには発展できない若者が多く存在することが課題としてあることが分かる。
本研究では、以上の問題意識を踏まえ、アメリカカリフォルニア州立大学チコ校でカーティス博士の下で始まった「SAGE」の日本への導入に取り組んでいる。これは高校生が実際に社会と関わり合いながら、社会貢献プランを考え、発表する大会である。この実践を通して、上記の課題を克服するための2つの「理論仮説」を明示し、その妥当性を宮崎研究室、40期41期の共同での実践、研究を通じて検証していく。
…社会問題の解決をはかるためには、目前の課題を克服する方法、その問題の根本的な原因を探り、その原因の解決を図る方法の2つのアプローチが存在する。両者に優劣は存在しないが、持続可能で教育的に発展していくためには課題の抜本的な解決法が有効的である。
よって、本研究では問題意識に対しての対象を、大学生よりも早い年代で、ある程度社会に対する意識が期待できると考えた高校生とし、アンケート対象とした大学生から移行した。
そして、生徒に社会貢献事業を展開する過程で課題発見能力、問題解決能力等を身に付けさせること(アントレプレナーシップ教育)で、現実社会に直接関与し、自らの社会における適性や生き方を考えさせる機会を与えることが可能になると考える。
…生徒にとって本当に学びとなる瞬間は、自主的に学びを求め、その活動を楽しいと思える時であり、生徒の経験と学習が結びつく時である。
本研究ではSAGEへの取り組みを通じて、生徒に社会との関わり合いを持たせ、一人一人の経験として、学びを深めていくこと(サービス・ラーニング)で、主体的にチャレンジし学んでいく姿勢や能力を養い、実際に社会に貢献しながら、自身の学びを深めていくことが可能になると考える。
本研究では、まず前述したSAGEの日本への導入を理論研究の実践として取り組むことを前提としている。SAGEは高校生、教師、大学生、企業の方などの多くの立場の人との関わり合いを通じて発展していく。そこで、主体者となる高校生を研究対象とし、活動の様子を記録、事前事後でアンケートの実施、振り返りや共有の場の充実を通して、そこでの高校生の変化を検証していく。
また、高校生とともに事業案を考え、スケジュール管理等も行う大学生サポーター、さらに運営等に主に関わる私たち宮崎研究室ゼミ生自身も高校生同様に研究対象とし、事前事後の変化を記録、インタビュー等を実施することで、高校生に学びの環境を提供する側にはどのような変化があるかを検証していく。
当日は2014年2月15日に開催予定のSAGE JAPAN CUPへのこれまでの取り組みをもとに報告する。
キーワード:社会貢献、高等教育、サービス・ラーニング、アントレプレナーシップ教育