大正期,昭和初期には行き詰まりの様相を顕在化し始めていた教育状況の中で『創価教育学体系』が著わされた。現在,著しい社会変容の中で改めて学校教育の目的や内容・方法が問われている。この現代的教育課題を解決する人間教育への理論と実践の展開が求められる。今こそ牧口先生の創価教育学から学び,現実的な教育改革への有効な手がかりを探究したい。
牧口先生は当時の教育課題をどのように把握し,改革への道を,どこからどのように切り拓いて行こうとしたのだろうか。この問いに対する牧口先生の回答を端的にいえば確かな教育方法を身に付けた教師たちの力によって教育改革を図るということである。
問題はその方向での教育実践を担うことができる教育技術を身に付けた教師をどのように養成するかということである。
牧口先生は価値論を教育の原理として具体的な営みとしての教育方法,教育技術まで含めて探究している。価値創造への主体な活動を尊重する教育の方法技術を研究することの現在的意義は極めて大きく重要である。教育方法論を中核とした教師の,教師による,教師のための教育学が求められる。
創価教育学とは,人生の目的たる価値を創造し得る人材を養成する方法の知識体系を意味する。それは教師養成のための知識体系であるともいえる。学習者は価値創造の練習をする。それを指導するのが教師である。教師自身が経験を踏まえた実践研究を蓄積して教育学の科学的建設を図る。その教育学と実践を融合させるなかで教師の専門的力量が培われる。
「創価教育学体系」は「総論」と「各論」計13巻の構想であった。第四巻まで刊行されたが,第五巻および各論は未刊である。それらは未来の課題として,私たちに託されたものとして受け止めたい。牧口先生の遺された課題に取り組むために本学教育学部および教職大学院が担うべき役割は大きい。
教育実践と研究活動を共に行うことを悦びとする教師を養成することが期待される。近年になって高度教育専門職養成を目指す教職大学院制度が発足し,いち早く本学にも開設された。「創価教育学」の継承発展と人間教育を担う教師養成を目指したい。