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創価大学教育学会>書庫>2012年 第11回大会口頭発表抄録
口頭発表C-2

コミュニケーション力を伸ばす学習のあり方

山﨑 貴美子(創価大学教職大学院 教職研究科)

Ⅰ 主題設定の理由

人間とは本来「他者とかかわりながら、よりよく生きようとするために学び続ける」存在だと考える。このように社会的存在である個が自己の確立を目指すとき、コミュニケーション力が求められる。コミュニケーション力は私たちが、他者(人、もの、こと)と関係を作るために必要な力であると言える。

現代では、共働きの増加、核家族化や少子化が進み、人と人とのつながりが希薄化している。家庭の教育力も低下し、ひきこもりや不登校などを始め、コミュニケーション不全が深刻化している。

その中で、子どもたちが集い、学び合う「学校」が担う役割はますます重要になっている。生きる力の育成のためにも、積極的に人と関わり、学び合うコミュニケーション力の育成が欠かせないのではないだろうか。学校では、塾や一人での勉強と違い、たくさんの友達とのつながりが形成できる。コミュニケーションを取れる子どもは、生活の中でたくさんの智慧を使い、更に学ぶことができると考える。豊かな人間関係が育まれている学習集団を創ることにより、お互いの信頼関係が高まり、安心感が生まれ、一人ひとりのよさが全体の中で生きてくるのではないか。

本研究では、他者にかかわり、関係性を調整し、学びながら生きていくという人間に本来備わっているコミュニケーション力を伸ばす方途に迫りたい。

Ⅱ 研究仮説

Ⅲ 研究方法

今回は、研究実習で東京都の小学校4年生を対象に行った授業を取り上げる。国語の「アーチ橋の進歩」という教材で一単元、授業を実践した。

仮説①を実証するため、ペアで実験を行った。本単元はアーチの強度を調べるための実験を行う部分がある。2人で協力して文章を読み、それをもとに実験を行わせることで正しく読み取らせたいと考えた。また、このような操作的活動を通し、仲間と学ぶよさを感じさせたい。

仮説②を実証するため、協同学習を取り入れた。協同学習とは、「小集団を活用した教育方法であり、そこでは生徒たちが一緒に取り組むことによって自分の学習とお互いの学習を最大限に高めようとするものである。」とJohnson, Johnson,&Holubec(1993)は定義している。協同学習が実践に結びつくようにたくさんの技法が作り出されているが、本実践では、日本協同教育学会のワークショップで実践された2つの技法を取り入れた。

「代わり番こに(交互発言法)」は子ども達をペアにし、交互に発言・応対させ合う技法である。自分の意見を必ずもつことや全体で発言しやすい状況を作ることができる。「雪玉ころがし」は雪玉をころがして大きくするように、子ども達をペアやグループにして、意見を増やすことができる技法である。時には、グループで意見交換し一つにまとめることもできる。

この2つの技法は、一斉授業の時と比べて、短い時間で全員が自分の意見を発言することができ、子どもたち同士のコミュニケーション力の育成につながると考えた。

Ⅳ 結果・考察

授業の記録と質問紙調査、抽出児童の変容をもとに、実践を分析し、操作的活動や協同的な学習を取り入れることによって、発言の少なかった子どもたちがよく話すようになったり、子どもたち同士のかかわりが増えたりすることなどが示唆された。詳しくは本発表で分析・考察したものを提示する。

キーワード:コミュニケーション力、子どもたち同士のかかわり、協同的な学習