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創価大学教育学会>書庫>2012年 第11回大会口頭発表抄録
口頭発表A-2

社会科における児童の資料活用力の育成

田中 伶奈(創価大学教職大学院 教職研究科)

問題の所在

子どもたちが活躍する舞台はグローバル化・情報化社会である。グローバル化・情報化社会では、私たち教育者を含め、明確な根拠を伴った自分の考えをしっかりと持っていなければ、他者とともに生きていくことが難しいのではないかと考える。

小学校時代から、根拠を明確にした自分の意見を持つことは、非常に大切なことであると考える。明確な根拠のある考えを持った子どもたちが、グローバル化・情報化社会において多様な考えを持った他者とともに生きていくことができるよう、児童にしっかりと資料活用力を育成させたいと考えた。特に子どもたちが苦手とする統計資料から必要な情報を読み取る力が身につけば、子どもたちにとっても大きな自信となるのではないかと考える。

研究の経緯

平成23年から全面実施された学習指導要領の改善の基本方針の中に「社会的事象に関する基礎的・基本的な知識、概念や技能を確実に習得させ、それらを活用する力や課題を探求する力を育成する観点から、各学校段階の特質に応じて、習得すべき知識、概念の明確化を図るとともに、コンピューターなども活用しながら、地図や統計など各種の資料から必要な情報を集めて読み取ること、社会的事象の意味、意義を解釈すること、事象の特色や事象間の関連を説明すること、自分の考えを論述することを一層重視する方向で改善を図る」とある。

これは、児童生徒が社会的事象に関心を持ち、児童生徒一人ひとりに社会的な見方や考え方が養われることを求めている。それとともに、児童生徒が社会的事象に関する基礎的・基本的な知識、概念・技能を確実に習得し、それらを活用する力や課題を探求する力を身に付けていくため、各種資料を効果的に活用し、社会的事象の意味を解釈し、事象の特色や事象間の関連を説明するといった言語活動を重視したものである。

そこで児童が社会科の授業において、自分の意見を発表する際、資料を明確な根拠とした発言ができるよう、的確な資料を選択し、資料の中から必要な情報を読み取り、それをもとに考えをまとめ発言できる力を育成したいと考え、今回の研究テーマを設定した。なお、ここでの資料とは主にグラフなどの統計資料とする。

研究の方法

児童の資料活用力を育成するといっても、児童一人ひとりが個別に行うという方法では限界があるものと考えられる。個別に資料から情報を読み取ったとしても、それはあくまでも抜き出しにしかならない可能性もあるためである。情報の抜き出しにならないためには、批判的思考が重要となる。1つの内容に関して2つ以上の資料を比較し、資料に書かれてある情報を比べ、違いを発見することで、なぜ違いが生じるのかという疑問が生まれる。その疑問を解決するために、また別の資料を用意し、比較する。その作業を繰り返す中で、明確な根拠となる資料が見つかる。この作業を児童同士で行い、お互いの資料を照らし合わせ、比較させる中で、必要な資料を選択し、資料の中から必要な情報を読み取り、自分の考えをまとめるという力をつけさせることができるものと考える。

そこで本研究では、①複数の資料を活用した社会科の授業実践を渉猟し、分析を加える②児童同士の話し合い活動やディベートを取り入れた授業実践を分析する③事象の特色や事象間の関連を説明するための理論や技法に関する先行研究を参照する④①~③をもとに児童同士の学習活動を通して複数の資料の比較考察や吟味を行うことができる教材ならびに指導方法の開発を行う。

これらの研究を通して社会科における資料を活用するための力量を育成することを目指すこととした。

キーワード:資料活用力、批判的思考、比較