我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会である。その実現のため、障害者基本法や障害者基本計画に基づき、ノーマライゼーションの理念に基づく障害者の社会への参加・参画に向けた総合的な施策が政府全体で推進されており、その中で学校教育は、障害者の自立と社会参加を見通した取組を含め、重要な役割を果たすことが求められている。
今、小・中学校等の通常学級において特別な支援が必要と考えられるのは「発達障害がある、発達障害の疑いがある、家庭に問題を抱えている」等の'気になる児童'児童生徒であろう。学級で気になる児童生徒、そしてそれぞれの個性を有する児童生徒が「毎日、学校へ来ることが楽しい」「勉強したい」と思う学校作りや学級作りが必要であり、教師はそれを追究していかなければならないのではないだろうか。
昨年度まで、私は、特別な支援を要する児童と共に生活するのに、特段、特別支援教育の知識や指導方法を持ち合わせていたわけではない。30余名の児童の中の一人として指導してきた。振り返ると、様々な課題や困難があった。私に、特別支援教育に関する知識がもう少しあったら、よりよい方法で切り抜けられたことも多かったであろう。しかし、学級集団を育てていくことに関しては、特別支援を有する児童がいるからという垣根は一切なかった。そこで、まずこの3名の児童の様子を振り返り、分析することから始める。そして、そこから学級の中の児童全てが参加できる授業、居心地の良い学級環境等を考えていきたい。
通常学級では、障害の有無に関係なく「学校生活で苦労している子」がたくさんいる。特別支援教育の視点で子供たち一人一人を捉え直すことによってこれまで気付かなかった学級に在籍する子供たちのニーズが浮かび上がってくるのではないだろうか。
その児童の多様性を踏まえた学習や環境を考え、工夫すること等を通常学級の標準装備とすることができたら、それこそが一人一人を大切にする教育になるのではないだろうか。
(1)3名のICFシートを活用した児童分析
自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群の3人の児童を思い返し、分析する。
(2)現任校での実践や過去の自分の実践を振り返り見直す。
(3)MI理論等に基づいた授業設計や教室環境の提案
(4)教師自身の特別支援教育的視点を磨く提案
子供一人一人が、自分の特性と向き合い、それを自分の強い個性として使いこなすことができるようになること、また、自分の苦手を知って、それと向き合い、克服できるように努力し、上手く付き合うことができるようになること、自分の「学習スタイルを確立する」ことが必要なのである。また、教師は子供理解から入る授業を考えるべきである。
そこで、子供を理解するために出会ったMI理論を導入することを考えた。
発達的な課題のある子も、外国籍の子供も、学力不振の子供も、家庭が複雑な子も、不登校になってしまった子も全て教育的ニーズのある子供である。
一人一人の子供に必要なことを見極めながら、認知と学習スタイルの多様性をふまえて個を伸ばしつつ、集団全体を見て指導する。つまり「認知と学習スタイルには多様性があるという大前提」に立った教育、それが特別支援教育ではないだろうか。
キーワード: 特別支援教育、MI理論、認知、学習