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創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会ポスター発表抄録
ポスター発表E-1

小学校の理科教育における直接観察の重要性

水林 順子(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ はじめに

今年度から小学校新学習指導要領が完全実施となった。それに伴い、理科は、授業時数が大幅に増えた。また、この数年間取り扱われなかった単元の復活や取扱い学年が下がってきた単元もある。加えて、近年、児童の理科離れと教える教員の理科教科への苦手意識が高まっていることも懸念されている。

一方、東北関東大震災によって、関東・東北地域では地殻変動が起き、福島県の原発の放射能汚染は大きな社会問題、環境問題になっている。

本研究では、今後、ますます重要になる環境教育に注目し、小学校の理科教育における直接観察の重要性について述べていく。直接観察は、牧口常三郎の『教授の統合中心としての郷土科研究』の中での一主張である郷土の直接観察をヒントに得ている。

Ⅱ 牧口の『郷土科研究』と直接観察

牧口常三郎は1903年、人間の生活と地理との関係を論じた『人生地理学』を32歳で発刊。この書は牧口の代名詞とも言える有名な著書である。そして、この『人生地理学』に次いで、牧口常三郎の第二番目の著書が『教授の統合中心としての郷土科研究』である。『人生地理学』の9年後の1912年(牧口当時41歳)に発刊されたのである。その著書では、児童の身近にある郷土の直観、すなわち、直接観察が重要であることを主張している。彼の主張する「郷土の直接観察」から、小学校の理科教育においても「自然の事物・現象」そのものの存在を直接観察させることは非常に重要なことだと考える。

Ⅲ 研究仮説

理科の単元導入や毎回の授業の導入段階で自然事象の提示、実物教材の提示をすることで学習意欲や学習内容への興味・関心を高める。児童の学習意欲の高まりによって、主体的に授業や実験に取り組み。

一方、自然事象を直接観察することから物事の真理や本質を見抜く能力は養い、育てることができると考える。実習研究での授業実践を踏まえて、直接観察からスタートした単元展開と児童のワークシートから直接観察の重要性について考察していく。

Ⅳ 研究方法

【対象】八王子市内の公立小学校の4年生
【単元】理科 「とじこめた空気と水」
【方法】授業実践とその分析、児童の学習記録の記述

Ⅴ 直接観察と環境教育

環境教育は今後、ますます重要になってくる。環境教育でまず大事なことは、地球上で起こっている環境問題への正確な把握である。実態把握には、直接、「自然の事物・現象」そのものの存在を直接、観察することが重要となる。

理科教育で、自然事象を直接観察させることは物事・現象の観察力を養う。また、自然そのものを感じ取る感性を養い、育てる。

Ⅵ 考察と課題

今後、ますます環境教育は重要性を増す。環境教育でまず大事なことは、地球上で起こっている環境問題への正確な把握である。実態把握には、直接、「自然の事物・現象」そのものの存在を直接、観察することが重要となる。

理科教育で、自然事象を直接観察させることで観察の目を養うことができる。また、自然そのものを感じ取る感性を養い、育てることができる。

自然事象の直接観察は、一見、簡単なように思われる。しかし、自然事象との出会わせ方や教員の授業研究面に課題があるのも事実である。また、児童の安全面への配慮もしなければならない。

今後、小学校理科教育での自然事象の直接観察が児童の学習意欲を高め、社会の現状を正確に把握できる観察力が養えることを期待するとともに、児童の理科離れが減ることを期待する。加えて、教員の理科教育への苦手意識を軽減できることを願うのである。そして、初等教育の理科学習における直接観察の実践が児童の生涯にわたる探究心を育む一方策となることを期待する。

キーワード:直接観察、自然事象、環境教育