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創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会口頭発表抄録
口頭発表D-2

子どもたちが学ぶ意義を自覚する教育評価の探究
 ―小学校教育における形成的アセスメントの可能性-

今田 景子(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ はじめに

「どうせ私はできないもん」実習校で出会った、小学校3年生の女の子の言葉が胸に刺さった。筆者が幼いころから強く苦しんできた心と同じ叫びであった。このような子どもは多く存在するのではないだろうか。

また、何のために学び、何のために生きていくのかという目的を見出せぬまま、'仕方なく'学び続けている子ども、また大人も多くいると実感する。

2000年にスタートしたPISA(経済協力開発機構 (OECD) による国際的な生徒の学習到達度調査)等の学力調査において、日本の子どもの「学力」は低下してきていると指摘されている。その「学力」の概念は、「知識理解」から「知識を活用する力」の変化が見られるが、それに伴い、教師自身の「評価観」は変革しているであろうか。

筆者は、教職大学院に入学し、「学ぶ意義」を自覚すると共に、自己の可能性を信じる喜びを感じることができた。それは、大学院の教員や学生が'ありのまま'の筆者を受け入れ、指導してくださった体験があったからである。教員の方は、学びの中で筆者がありのまま感じたことを重要視してくれ、そこから筆者自身の学びをより深めるための言葉をかけてくださった。このことより、先生方の中に、温かい「評価観」があると感じた。子どもにとっての最大の教育環境である教師の「評価観」によっては、上記のような学ぶ意義を見失う子どもたちを生み出してしまう可能性もある。

教師としての「評価観」を見つめなおし、子どもたちが学ぶ意義を自覚することができる評価として「形成的アセスメント」があげられる。子どもたちが自分なりの「学ぶ意義」、また自身の可能性を信じ学び続けることができるとする「形成的アセスメント」の可能性を探究していく。

Ⅱ 研究目的

教職大学院に入学し、教育の目的は「人を人間にする営み」であることを学んだ。「人間にする」とは、一人ひとりの人間として生き抜く可能性、個性的な生き方を作り出していく可能性を探ることだと考える。「形成的アセスメント」とは、「生徒の学習ニーズを確認し、それに合わせて適切な授業を進めるための、生徒の理解と学力進歩に関する頻繁かつ対話型のアセスメント」である。人間になるためのアセスメントとして有効に働く。しかし、「形成的アセスメント」はまだ日本の教育では一般的に見られていない。そのため、「形成的アセスメント」による教育、特に小学校教育における可能性を追究したい。

Ⅲ 「形成的アセスメント」による小学校教育への可能性

(1)「形成的アセスメント」とは

社会的背景、学術的背景から追究

(2) 富山市立堀川小学校実践分析・考察

「形成的アセスメント」の事例の多くは、ヨーロッパの中等教育がほとんどである。「形成的アセスメント」を実践している学校では、子ども一人一人の「学び方」に変化が現れ、「生き方」の変化にも通じている。堀川小学校での単元計画には「期待する子どもの姿」として「生き方」に関する姿が書かれている。この共通点から、堀川小学校の実践を基に評価方法について「形成的アセスメント」を実践するために必要なこととして6点の観点から分析する。

(3) 実習研究における分析・考察

日野市立滝合小学校第4学年33名のクラスでの実践。実践の中で、自身の評価観の見直しをさせていただき、教師の根本的評価観の変革の必要性を実感した。授業記録(逐語) 、ノート、ふりかえりカードから分析し、「形成的アセスメント」の可能性を追究する手がかりとする。

Ⅳ おわりに

「形成的アセスメント」とは、単に「形成的評価」を英語に訳したものではない。学習途中に診断をするが、診断つまり、子ども一人一人を認識した上で、生き方にせまる、働きかけをもたらす。「対話型のアセスメントである形成的アセスメント」は、子どもたちに「学ぶ意義」を自覚させることができると考える。

キーワード:教育評価,形成的アセスメント,学ぶ意義