創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会口頭発表抄録
口頭発表C-3

書くことによる、人間教育の実践
 ―自分自身を見つめ、受け入れる活動―

森田 倫子(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ.はじめに

教職員生活の中で、1対1の対話を重視して、人間教育を実践してきたつもりである。しかし、自分が意識してこなかった最たるものが、「書く」作業である。

人間は、何かを表現する手段の一つとして、文字を使う。その文字を「書く」作業において、人間は、様々な思いをもったり、様々な思いに気付いたり、更に、様々な姿勢や習慣を身につける。これから先、更に人間教育を深めていくために、この「書く」という作業を価値づけ、様々な実践を研究し、具現化していきたいと思う。

Ⅱ.創価教育の中で

創価教育提唱者である牧口常三郎氏は、人生最高の目的を、「一人一人の幸せである」とした。そして、そのために必要なことは、真理の認識と価値の創造であるとした。つまり、究極は、「生きる意味を知り、生きる喜びを感じる」ということであると考える。真理の認識と価値の創造ができるようにするには、実際に触れ、深く学び、思考し、そして、感じ取ることが必要であると考える。

その活動は、様々な場面で行うことができるが、自分の思考や経験に触れる場、そして、その思考や経験を残すことができ、繰り返しその活動を行い続けることが出来るものは、「書く」作業を通した記録である。「書く」ことによって、「真理の認識」と「価値の創造」が深まり、それこそが、「人間としての幸福を感じること」に繋がっていくと考える。「創価教育」という観点から、「書く」という様々な活動を価値づけ、実践化につなげたいと思う。

Ⅲ.文字の起源

「文字」とは、言葉(言語)を伝達し記録するために線や点を使って形作られた記号のことを言う。文字の起源の多くは、簡略化して描いた絵文字(ピクトグラム)であり、それが転用されたり、変形、簡略化されたりして文字となったといわれる。

認知科学で、チンパンジーが人工言語を習得する実験を行い、チンパンジーは、かなりの数の言語を習得しただけでなく、自発的に使用することもあった。しかし、「ヒト」は、言語を発達させ、その言語の組み合わせで「ヒト」同士のコミュニケーションを取り、「ヒト」社会を生きてきた。そして、伝える手段として、または、表現の手段として「文字」を用い、「人」になっていったのである。

Ⅳ.「書く」ことの意味

以上のように、文字は生まれ、発達した。文字を「書く」ことは、近代になってから、全人的になった。現代になっても識字率が低い地域もあるが、人間は、文字を「書き」、表現することによって、文明を発達させてきたことは言うまでもない。では、現代において、文字を「書く」という作業の意味することを深く掘り下げると、以下の意味があると考えられる。

1. 字を「書く」

文字の形や書き方を習得することを通して、物事にはルールがあり、それを基本として大事にすることの意味を知る。また、一つのことに集中する習慣もつけられ、物事への取り組み方を知る。

2. 文を「書く」・・文の書き方によって、意味が違う

ア 自分の考えを整理しながら書くこと
自分の考えをまとめ、確認し、自分を見直すことができる。
イ. 人に書くこと
相手の気持ちと考え、相手の気持ちに届くようにと、相手を思う気持ちをもつことができる。また、自分が伝えたいと思っていることの整理ができる。
ウ. 記録として書くこと
自分の体験、思考の過程を記録することにより、その記録をもとにして、自分を見直すことができる。その見直しの作業において、自分の来し方と向き合うと共に、自分自身を受け入れることができるようになる。
などといった意味を持つと考えられる。

Ⅴ.具体的な実践例

1については、実際に、学校教育の中で、「書写」指導として行われている。その他、視写、写経といった活動によって、具現化されている。

2アについては、学校教育における、作文指導、日記指導などで行われている。イについては、国語科指導の中で、登場人物に手紙書く活動などもあるが、心理療法にも、「ロールレタリング」という手法があり、相手に対する思いを綴ることで、自分の感情を整理したり、自分の在り方を見つめたりすることができるとされている。ウについては、書く授業におけるノート作成もそれにあたる。また、ポートフォリオを作成するという活動もそれに含まれる。

Ⅵ.実践の具体化

1,2の実践については、詳しく別紙で紹介する。

Ⅶ.終わりに

「書く」ことを大切することは、自分自身を大切にすることである。そのことを価値づけながら、今後更に子どもの幸せのために尽力したい。

キーワード:文字化、ポートフォリオ、人間的成長