昨年度の発表では協同学習を用いた学習は、児童の主体性に一定の効果が見られるとの見解を示した(2010 西中)。今年度はそれに加えて、継続的に協同学習を取り入れたときの効果について検証していきたい。
協同学習の先駆者であるJohnson, Johnson, Holubecは、協同学習について「学習者を小集団に分け、その集団内の互恵的な相互依存関係を基に、協同的な学習活動を生起させる技法が協同学習である。」と述べている(1993 邦訳2009 )。また、George M.Jacobs, Michael A.Power, Loh Wan Inn は「生徒がさらに効果的に一緒に勉強するのを手助けするための原理と技法」だとしている。協同学習を小集団に限定することなく、さまざまな形態で行われる学習として捉えることに共感を覚える。
また、Spencer .Kaganは協同学習を細かな手順を示し、一つ一つの技法を確立している。そこにはペアで学習を進めるものもあれば、4~5人の小グループで学習を進めるものもある。
このように、協同学習といっても研究者によってニュアンスが異なる。そのような中で筆者は、実際の授業場面において様々な角度から協同学習を実践している。特に注目するのは3つの学習形態である。一つは一斉授業であり、二つはペア学習であり、三つは小集団での学習である。どの学習形態が、どの程度児童の学習に影響を及ぼすかを実践レベルで明らかにするために本研究を行う。
研究の対象を筆者が担任をしている葛飾区の小学校6年生29名とする。研究は小学校6年社会科の大単元「近代国家への歩み」「戦争から平和へ」(教育出版 6年上)の二つに渡って行う。
授業は、同一クラスにおいて行う。その中で、異なる学習形態、一斉・ペア・グループを小単元ごとに用いて授業実践を行う。
授業は学習形態以外は①課題提示、②個人思考、③ペアもしくはグループでの話し合い(一斉の場合は割愛)、④全体での話し合い、⑤教師の補足説明、⑥学習の振り返りという同じ流れで行うこととする。
効果を測定するために、①毎時間の学習の振り返りと、②単元における業者テストの観点別成績の比較、③単元終了後に自分の考えを書く記述シートの比較を行う。文章の量と内容について、観点別の評価基準表を作成し比較を行う。
本学級では、協同学習を年度の当初から行ってきたため、児童同士がやりとりすることに慣れてきた。話したり聞いたりする場を小集団内に保障することで、意見を交流することに良い印象をもっている児童は多い。課題について意欲が高いときは、話し合いの際に自分の根拠となる資料を提示しながら、思いや考えを述べることができる。その一方で、ペアやグループでは自分の考えを表現することができても、全体での話し合いでは自分の考えを表現できなかったり、ペアやグループを作る際には、教師が設定しなければうまくできなかったりする児童も存在する。継続して続けることで、こうした状況を改善し、児童が互いの良さを出し合える授業を目指したい。
キーワード:協同学習 社会科 評価基準表
■参考文献
・ジョンソン,D.W../ジョンソン,R,T./ホルベック,E.J. 著 石田裕久・梅原巳代子 訳『学習の輪』2010年 二瓶社
・ジョージ・ジェイコブス マイケル・パワー ロー・ワン・イン著 関田一彦 監訳『先生のためのアイディアブック』 2005年 日本協同教育学会