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創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会口頭発表抄録
口頭発表B-2

個を生かす教師のはたらき

水谷 明美(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ はじめに

本大学院に入学し、第一回目となる授業での問いが「個は集団に埋没するかしないか」というものであった。筆者は、今まで「個」ということを意識したことがなかった。そして、この問いに対しての答えはYesであると思っていた。しかし、大学院の授業の中で、子どもたちの実態に基づいた研究、分析を行う中で今まで考えていなかった「個」と「集団」の関係について明らかに輝くものが見つかっていくのである。それが、「個を生かすことにより集団が生きる」「個を追究することで、集団が見える」というものである。これは、子どもの事実から学べたことである。では、実際に筆者自身が実践の場で、どのようにして「個」を見るのか、という疑問が浮かんだ。その疑問を解決するチャンスは実習にあると考え、一年間の実習において、全身全霊で子どもたちとぶつかり「個」を見る努力をしてきた。そして「一人の個を追うこと、個を生かすことで集団を生かす(変える)こと」に焦点を当てた実習を行ってきた。その中で教師(筆者)のはたらきが子どもたちの関係を変革し、教師(担任・筆者)と子どもの関係を変革していく瞬間に出会うことが多くあった。筆者は恵まれたことに、一年間の実習の中で高学年、中学年、低学年という小学校の発達段階の過程をすべて見させてもらう機会を得ることができたのである。このことにより、人間の成長・発達段階の過程を追うことができるとともに、発達段階における比較検討ができたのである。そこから見え、感じる「個」の輝きと、一人の教師のはたらきが、一体どのように「個」に影響を与えうるのか、個に隠された真の学びを追究したい。

Ⅱ 研究の目的と方法

1. 研究の目的

本研究の目的は、「個を生かす教師のはたらき」とは何か、という視点から教育を検討し、今後の教育の在り方を主に小学校の教育の立場から考察することである。現在の教育における「個」のとらえや、生かし方、それに伴う課題を探求し、筆者の実習での経験を踏まえ、児童の実態に基づいた分析から、教師のはたらきについて提案していきたい。

2. 研究の方法

 文献研究:「個」というものの捉えや、生かし方を整理するとともに、日本における取り組みを調査した。
 実習経験:「個」へのアプローチについて児童の実態に基づき考え、教師のはたらきについて省察する。

Ⅲ 個とは何か

「個」と聞くと浮かんでくるキーワードは様々挙げられる。個とは、個人が持っているアイデンティティや、その子なりに創り持っている考えなど、生き方そのものであると考える。だが、あまりにも「個」のとらえ方の定義は多様である。どのようにとらえるかで、教育の在り方が変わってくるのである。ここでは、「個」における視点を広げ、どのようにとらえ、また、様々な視点がどのように個へと関連付いているのかということを論じていく。

1. 重松鷹泰の文献より考察

Ⅳ 筆者の実習での実践

1. 子どもの事実に基づく研究の必要性

教育の主体は子どもたちである。いくら教師が教材を生かすための授業研究をしようとも、授業は目の前の子どもたちとともに作り上げていき、学びの主体は子どもたちであることは言うまでもない。教育者は、常に子ども一人一人の成長過程を追究していく必要があると考える。子どもの把握において重松は「子どもたちを把握するのが困難だというのは、実は当然のことである。子どもを生きている人間として把握しなければならないからである」と述べ、子どもの把握における考えを3点述べている。本章では、実習を通して抽出した児童について追究してきた過程を考察する。

2. 4年T君の事例

3. 6年Y君の事例

4. 6年Hさん(緘黙児童)の事例

5. 6年K君の事例

Ⅴ おわりに

キーワード:個、教師、生かす、学び