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創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会口頭発表抄録
口頭発表B-1

食が子どもを変える─食育で育む人間性─

西 敏明/西尾 文枝/長谷川 美紀(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ 研究テーマ選定の理由

食は生活の基本である。私たちは日常生活、コンビニやできものの料理を利用する回数が多い。レシートを振り返ると、体の健康よりも手軽さ便利さを優先させてしまっている現状に気付く。手軽さ便利さの裏にどれほど生活習慣病などの病気を引き起こす添加物が潜んでいるかは計り知れない。健康は目には見えず、蓄積され健康に影響を与える。そのため、影響が出る前の早い段階から健全な食生活を考えることが必要であろう。日本は現在、世界一の寿命長寿国であり、日本食に世界が注目している。しかし、現在の若者世代は長生きできないと言われているのも事実である。現在、食育が叫ばれている。それは命を守り、健康を保持する教育により心も体も健康な人間が増えることが日本の未来にとり、重要であるからだ。そのため、学校教育での食育が基盤となる。学校現場での"食育"について深めていきたい。

Ⅱ 学校給食と食育の歴史

学校給食は、第二次世界大戦後から始まり、全国に広まった。当初は、食糧不足からアメリカの援助を受けた脱脂粉乳の小麦を使った学校給食であった。1954年に学校給食は「教育」であると位置づけた「学校給食法」が成立したと同時に、アメリカ産輸入小麦を使用したパン、ミルク、おかずの学校給食も、制度化された。これにより、日本人の食生活は洋風化し、米の消費量が減り、粉食が普及した。学校給食を通して家庭に新しい味や献立、食習慣が持ち込まれ、大きな影響を与えた。しかし、この食の洋風化で米の消費量が減ったことにより、日本政府は大量の米の在庫を抱えることになる。そのため、1976年から学校給食で米飯がはじまり、献立もご飯のおかずとなる料理が増えた。2005年に「食育基本法」が成立したが、その背景には、高齢化や生活習慣病の増加による健康問題がある。また、食糧・農業問題も挙げられる。とくに問題になったのが食糧自給率である。米を主食とする日本型の食生活が変わり、輸入穀物を前提とした肉や脂質を多く食べるようになり、食糧自給率が大きく下がり、日本の農業や農村の衰退を招いた。このように食育は、日本が抱える様々な問題(健康,食糧自給率,食の安心・安全など)にすべて関わりをもっている。食育がこれらの問題を解決していけることが期待されている。「食育基本法」の後に食育推進基本計画が作られ7つの基本方針と9つの数値目標が定められた。これらは、家庭・学校・保育所・地域社会の様々な分野において教育関係者、食品関連事業者等多様な主体が取り組むべき国民運動とされている。この中に地産地消の考えも含まれており、計画ができたことにより、食育についての積極的な取り組みが各地でみられるようになった。

Ⅲ 実践目標

食育を通して、食育で私たちの考える実践目標と具体例を取り上げていきたい。以下は例である。

・喫食率をあげる食育

給食を残す子どもが多いのが学校給食の現状である。食べ物の好き嫌いで栄養の偏りが見られる。これを無くしていくための実践を考える。教師の強制で食べさせるのではなく、子ども自らが食べたいと思える食育が必要であると考えた。

・義務教育にとどまらない持続可能な食育

生涯の健康づくりのために、学校生活の間だけでなく、義務教育終了後の成人になった時に賢い選択、豊かな食事を個人の生活でもできるようになることが大切である。義務教育だけにとどまらない食育の実践を考える。

Ⅳ まとめ

自分と自然や他人とのつながりの中で、命について考えることは、生きる上での豊かさにつながると考える。食べるということは、体の健康を保つだけでなく、命をつなぐことでもある。また、食べ物の起源を考えることで作り手の思いや遡っての自然への敬意,慈しみも共に学んでいくことができる。つまり、食育により命や豊かな生き方について考えることができるのである。つまり、食育は人間教育であると言える。食育により食べ方や食べ物が変化するだけでなく、社会が変わり、環境が変わる。栄養教諭だけでなく学校全体で食育に力をそそぐことが教科の育成や生徒指導にもつながっていく。そのための実践例や具体案を示しながら、何より子ども一人ひとりが心身ともに健康であり、日常生活を楽しく送れるような食育を目指していきたい。

キーワード:食育、学校給食、食文化