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創価大学教育学会>書庫>2010年 第9回大会ポスター発表抄録
ポスター発表F-1

教師の読み聞かせ―絵本に秘められた可能性―

田島 歩(創価大学教職大学院 教職研究科)

はじめに

 2001年12月に成立した「子どもの読書活動の推進に関する法律」には、読書に親しむ態度を育成するためには「朝の読書や読み聞かせなどの取り組みを一層充実させていく」としている。
 全国学校図書館協議会と毎日新聞が共同で、全国の小・中・高等学校の児童生徒の読書状況について毎年行っている調査「第55回読書調査」によると、1カ月で本を読まない子ども(不読者)は、小学校で5.4%、中学校で13.2%、高等学校では43.0%となっている。中学生を見ればわかりやすいが、この7年で読書をする子どもは着実に増えている。
 そうした背景には「朝読」と呼ばれる始業前の読書活動の広がりがある。「朝読」とは「毎日やる」「みんなでやる」「好きな本でよい」「ただ読むだけ」を原則とした、児童・生徒が読書に取り組む活動を指す。実践している学校は小・中・高を含めて2万5千校を越えたとの調査結果もある。
 また、「読み聞かせ」と呼ばれる、教師や保護者のボランティアが本を読んでくれるという機会が増えたことも要因だと思われる。
 本稿では、小学生にとって教師に本を読んでもらう「読み聞かせ」は、どのような意味があるのか考えていきたい。

1.絵本と読み聞かせ

 絵本について、『現代学校教育大辞典』では、「一体化した文章と絵でメッセージを伝える絵本は、早い動きや音声を伴うビデオとは異なり、子どものイメージや期待が十分に入り込む」と定義されている。また、絵本の種類は「①物語絵本:物語の展開を重視する絵本で、創作絵本と再話・再創作絵本がある。②知識絵本:科学性と論理性を重視する絵本で、知的好奇心や知識欲を刺激し、知的な要求に応えられる。③生活絵本:生活を題材にして、生活習慣や善悪の判断、社会性などを身につけさせる絵本④図鑑などに類する絵本:動植物や事物の仕組みや機能などを細部まで伝える。⑤うたの絵本:わらべうたなどのリズムのある言葉を唱えたり聞いたりして楽しむ絵本」と分類されている。

 読み聞かせについて『現代学校教育大辞典』では、「聞き手のために本を読んであげること。聞き手と読み手がその楽しさを共有すること目的とする。」また、「何を読むかは聞き手の興味と理解力とによって異なるが、読み手自身が興味を持つことが楽しさを伝えるうえで重要である。」と、書かれている。

2.効果

 読み聞かせの効果については、研究者や実践者によって多様な考え方がある。
 文部科学省は「先生の読む言葉を聞きながら、登場人物になりきって、想像上の世界に思いを巡らし楽しみます。その際、登場人物の悲しみや悔しさなどの様々な気持ちに触れることができ、他人の痛みや思いを知る機会」と、児童の想像力と他者理解を挙げている。
 高木享子は「学校における読み聞かせは、クラスの仲間が共にお話の世界の中で笑い、ドキドキし、憤ることができる」と述べ、松居直は「もっとも大切な意味は、読み手と聞き手とが“共に居る”ということです。…絵本体験はいつまでも子どもの心に残り続けます。一生忘れることはありません。」と述べている。

3.読み聞かせをする教師の役割

 現在、私は教職大学院の実習として小学校に行っている。担当は一年生であるが、普段、なかなか話を聞けない子どもも読み聞かせをする時は、真剣な目で聞いている。また、休み時間には読み聞かせをした本を囲んで、子ども同士で読んでいる姿も見られる。教師が読み聞かせをすることによって、自分で読むきっかけを作れたように思われる。

 これからの展望としては、学習指導要領の改訂に沿い、読み聞かせだけで終わらせず、教科指導につなげたり、道徳や総合的な学習の時間につなげたりしていきたい。

おわりに

 絵本作家は、芸術として絵を描き、詩のように言葉を精選している。だからこそ、教師は「この本を子どもに読み聞かせしてあげたい」と思うのであろう。教師が一番の絵本好きになれたらステキであると思う。

キーワード:絵本、読書教育、読み聞かせ