「一人ひとりを大切にする」ために、どのような指導ができるかを模索している。通級指導学級では、個に応じた指導ができるよう様々な工夫が行われている。その工夫を授業の中で取り入れることが、学習に困難を感じている児童への支援となるのではないかと考え、算数科と国語科での教材研究を行い、それを踏まえて授業を実施した。
「一人ひとりを大切にする」ために「アセスメント」を重要視した。アセスメントの方法としては、高橋の研究1)を参考に座席表を用いた学級アセスメントを行った。その後、気になる児童の行動観察を行い記録した。その記録をもとに、指導計画立案時における必要な支援を考えた。
ユニバーサルデザインに関する研究2)を参考にし、視覚、聴覚、触覚・身体感覚を使って学べるよう教材研究を行った。特に、視覚的支援と身体感覚を使って学べる活動を重要視した。視覚支援として、プロジェクターとスクリーンの使用、写真の活用、大きく表せる板書の工夫を行った。触覚・身体感覚を使う活動としては、具体物、半具体物の操作活動を毎回の授業に取り入れた。
授業では、児童がスモールステップで学べるよう教材の提示の仕方を工夫した。具体物操作の活動においては、算数科では身近な具体物操作(おはじき等)から、教材の具体物操作(数え棒、ブロック)へと段階を踏んだ。ワークシートの作成においても、自力解決できるよう前時の活動や既習事項をふまえた工夫を行った。
1年生算数「20より大きい数」での教材研究を行った。視覚的支援、スモールステップの課題設定、操作活動を多く取り入れた授業は、数の理解に有効であった。しかし、数字を「10が□こ」と表す練習問題では、「よくわからなかった。」と感想を書いていた児童と、「たのしかった。」「かんたんでした。もっとむつかしくしてください。」と書いた児童がいた。
通級指導教室の個別学習で使っていた、5W1H(「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「どんな気持ち」)のカードを用いて、作文指導を行った。文型を使うことにより、文型指導を行う前の作文と比較すると、作文が苦手な児童の文字量は増えており、時間内に書き上げることができた。しかし、作文が得意な児童にとっては、自由な記述ができないというデメリットがあった。
学習に困難さを感じていると思われる児童にどのような手立てができるのか、通級指導での個別学習の視点と、その支援が全体への支援となるような授業つくりを模索した。さらに、具体物を操作した活動の時間を必要とする児童と、そうでない児童がいるのが教室である。「最大の教育環境は教師自身」、一人ひとりに寄り添う支援が行えるよう、今後さらに以下の研究をしていきたい。
キーワード:支援、授業つくり、アセスメント
参考・引用文献
1) 高橋あつこ:LD、ADHDなどの子どもへのアセスメント&サポートガイド、ほんの森社
2) Universal Design for Learning Guidelines by CAST NATIONAL CENTER ON UNIVERSAL DESIGN for LEARNING