明年、平成23年4月より小学校5・6年で年間35時間、週1時間、「外国語活動」が完全実施されるが、小学校で英語教育を行うことに対しては、賛成派もいれば反対派や懐疑的な声も後を絶たない。
最も多くあげられる問題点は、英語教育における小中連携である。移行期間に入り、小学校英語活動の実施率が上がってくるにつれ、小学校英語活動と中学校英語教育との接続や連携が話題に上ることが多くなっている。主な理由としては「同じ中学校区内の小学校での英語活動の内容が違い、中学校入学時点で足並みが揃わないこと、小学校で楽しく英語活動を体験した子供たちの学習意欲やコミュニケーションに対する積極性、中学入学後に低下していくこと、小学校で音声中心の活動を重視したにもかかわらず、中学入学後、特に『話す力』が思ったほど伸びないこと」(田中2007)等が挙げられている。つまり、小中連携を考えたカリキュラムづくりの必要性が浮き彫りになっている。
また、別の問題点として考えられるのは、教師の外国語活動を行う目的の認識のズレである。外国語活動の目標は、学習指導要領で「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う」と掲げられているように、コミュニケーション能力の育成が目的である。そして、「コミュニケーションへの積極的な態度」とは、学習指導要領(2008)にあるように「日本語とは異なる外国語の音に触れることにより、外国語を注意深く聞いて相手の思いを理解しようとしたり、他者に対して自分の思いを伝えることの難しさや大切さを実感したりしながら、積極的に自分の思いを伝えようとする態度などのこと」である。しかし、実際は教師の英語を扱うことに対する不安が大きく、子供に英語を学ばせることが目的になっており、コミュニケーション能力を育成することに重点が置かれていないところがある。そして、コミュニケーションを図ることが目的となっていないことが多い。
以上に挙げた問題点から、単に英語を学ぶだけではなく、小中連携を考え、コミュニケーション能力を育成することを目的とした授業づくりを考察した。つまり、自己とコミュニケーションをしたことを(例えば、自分の好きな物など)自己表現し、他者に伝えるコミュニケーションを目的としたものである。また、単なる情報のやりとりだけでなく、思いや考えを伝えるコミュニケーションを目的としたものである。
「自己表現活動」を中心としたカリキュラムをつくることにより、以下の三つの点が期待される結果である。第一に、子供の学習意欲が高まる。第二に、自分のことを伝えるコミュニケーション能力を身につけることができる。第三に、自己表現をし合うことによって子供同士の関係づくりを促進することができる。
以下のような「思い」を中心に活動する「自己表現活動」を中心とした授業実践は中学校ではあるが、小学校においても実践することが望まれると考える。
キーワード:小中連携、外国語活動、コミュニケーション能力、自己表現、カリキュラム