教師は、過去に実践してきた授業の成功、失敗例をもとに新たな授業を構想したり、教育関係書籍や他の教師の授業実践から見出した指導方略を適用したりして実践を積み重ねている。しかし、実践した授業を客観的に分析・評価する方法が明確にされていないため、授業における指導方法が経験値だけで終わるのが現状である。そこで、授業の成否における因果関係を見出し、自身の授業における指導を客観的に分析・評価することができる方法が求められている。
「創価教育学体系Ⅰ」(牧口 1930)において、牧口は、教育学研究の対象について、「教育の対象は児童であるが、教育学の研究対象は、教育活動の事実である。」と、教育活動の事実を研究することの重要性を述べている。更に、「先ず成功と失敗の事実を正確に認識し、その記録を作る事である。」(牧口 1930)と、成功事例、失敗事例における分析データの比較分析の必要性を述べている。つまり、授業研究においては、授業実践における事実を客観的に分析するために、授業をICレコーダーやビデオで記録し、教師及び学習者の発言を文字起こしした上で、その発言内容をデータとして授業を分析することが求められる。更に、授業において同じ教育方法を用いたのにも関わらず、成功した事例と失敗した事例の記録を正確に記録することが研究データとして必要になってくる。
牧口は、教育活動の研究方法について次のように述べている。「人間社会に行われる教育現象を、平面的に空間的に総合し、統観し、分析し、比較し、彙類し、統合して、個性的将特殊的事実を普遍化し、概念化し、以て知識の一大系統に到達したのが、教育学の科学的研究の成果である。」
つまり、授業研究の方法として、分析データをカテゴリー化によって数量的に分類し、そこから授業の特徴における概略を導き出すことの必要性を述べていると解釈することができる。また、カテゴリー化によって導き出された概略に基づき、授業の解釈と修正を繰り返すことによって授業の特性にあった概念を見出し、その概念及び既念間の関連を統合することによって暫定的にモデルを構成することが、個性的将特殊的事実の普遍化と解釈することもできる。更に暫定モデルを繰り返し実験証明することによって普遍化・概念化することが述べている。授業を分析するためのカテゴリーは、授業記録をもとに修正、再解釈を行い、授業分析において妥当性のあるものを検討した上で、設定することが求められる。また、授業設計を重視した牧口の立場から、設計概念と分析概念における相互関連を考慮し、検討することによってモデル化を行い、実験証明を繰り返すことによって、指導方略における普遍化を図ろうとしたのではないかと考察することができる。授業の分析の方法として牧口(1930)の示した研究方法を筆者なりに解釈し、析出方法を考察し図に示した。(図1)
「創価教育学体系」において牧口が示唆した教育実践の析出方法について考察を試みた。今後、この方法を適用し、教育実践の分析を試みていきたい。
キーワード:創価教育学体系、授業研究、授業分析