創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2009年第8回大会口頭発表抄録
口頭発表B-4

「生徒発想型ボランティア」の取り組み
―「社会参加力」形成についての考察―

成清敏治(創価大学教職大学院 大学院生)

はじめに

photo  現在の子どもたちには社会性がない、ということを聞く。たしかに生活の乱れや規範のなさなどが、よく取り上げられている。これらは当然、その子たちだけに原因を帰するのでは解決につながらない。大人社会が次世代の子どもたちに、どのような社会を形成してくれるのかという期待、そして参加を促し、現実社会での実践力を育成していく取り組みを考えていかなければならない。
 ここにあげる実践は「社会参加型学習」として、生徒が主体的に地域と関わったものである。

実践事例

1. 背景

 「伝統的経営困難校」という評判がたつK中学校。生徒も落ち着きがない。K中の地域はお祭り好き、人情豊か、そして商店街が中心にある。この特色を生かす方法はないかと模索し、私が教務主任と総合学習(平成14年度導入)の担当を兼ね、地域と協力して学校建て直しをする貢献策を考えた。

2. 経過(カリキュラム)

 社会科の地理的分野の「身近な調査」のフィールドワークと総合学習の「社会貢献=ボランティア」を組み合わせて、1学期半ばから2学期初めまでのカリキュラムを構成した。しかし、会議等での反対意見(生徒を外に出して安全かという意見…いろいろな意味で)があり、実施が2ヶ月遅れになった。

3. スクール・ボランティアサミット

 学年として総合学習で地域学習を6月より始めた。各クラスでテーマを決め、我がクラスは「地域に根ざした活動を求めて~生徒自らが考える地域貢献~」とした。8月のボランティアサミット全国大会に向けて、クラスを4グループに分け、生徒が地域を歩き、課題を見つけて、地域貢献ボランティア計画を立てる取り組みが始まった。ここで地域の方々の知恵を借りることになる。

4. 展開

 グループで2つずつボランティア計画を立て、活動を分類(短期・長期・お金がかかる)した。その計画に対し、地域の町会長、青少年委員、商店街振興役員の方々を学校に招き、指導を受けた。生徒はそこで実践できるもの、できないもの、課題をクリアするものを学んだ。このように生徒自身が考え出した計画を、地域社会とともに考えていく作業のなかに、生徒の「社会参加力」が育まれていくものと考える。下記は、その後に実践にたどりついた項目である。
 ★商店街フラワー計画
 ★区民センタークリーン大作戦
 ★放置自転車クリーン大作戦(現在も継続中)
 ★公園遊具ペンキ塗計画
 実施できなかったものも多数あるが、それが社会の現実であると生徒に認識させることも「社会参加力」の1つであると考える。

5. 結果報告会の開催

 夏休みを通して実践した活動を、地域の方や保護者を学校に招いて、報告会を開催した。交流の輪が広がったこと、地域との協力性が生まれたこと、その後の職場訪問・体験がスムーズにできるようになったこと、そして何よりも、生徒が生き生きとした笑顔を見せることが多くなったことが成果として大きい。

「社会参加力」を育成する学習

 「児童・生徒が自律した市民として社会的な諸問題を改善したり、解決したりしようとする行為に関与することを通して、民主社会に積極的に参加」るのに必要な資質育成をめざした学習」(唐木清志氏の定義)
 「よりよい社会をつくる市民の一員として、社会的課題を解決する活動に継続的に参加し、能動的に社会に働きかけていく行為を通して、市民的資質の育成をめざす学習」(鈴木正行氏の定義)

キーワード:社会参加、地域社会、地域貢献