創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2009年第8回大会口頭発表抄録
口頭発表B-3

応用行動分析の観点を生かした支援の工夫

堀内寿美香(創価大学教職大学院 大学院生)

はじめに

photo  情緒学級等通級指導教室では、人との関わりや学習に困難さを抱え、集団での学びの場の成立が難しい児童が通級してきている。ひとりひとりの行動観察を通して特性を知り、その記録をもとに指導の工夫を行うことで場が成立した。
 今回は、その取り組みについて報告する。

Ⅱ 取り組み

1. 書字に困難さを抱え、感情のコントロールが難しく、不登校ぎみの児童への取り組み

 教室での行動観察、初回通級の様子から、勉強に取り組めない理由の一つに書字に困難さを抱えているのではないかと考えた。最後まで達成できない課題も多く、個別学習では、達成感を持たせることによって、自尊感情を高めたいと考えた。興味を持って学習に取り組めるよう、本児の得意な図工(工作)・理科の実験を取り入れた。落ち着いた環境で友達とかかわる経験を積むことができるよう、刺激の少ないおだやかな児童との小グループ活動を取り入れ、学習では、教室で「自分もできる」という自信と安心を持って学習に取り組めるよう先行学習を取り入れた。

2. 感情の表出が難しい児童への取り組み

 表情カードを使用し「どんな気持ち?」と考える時間を持つようにした。「笑っている」「ほめられたとき」「怒っている」「しかられたとき」など、自分の気持ちを振り返り、言葉に表す経験を積む活動を行った。絵カードを見ながら、話を聞いたり、一緒に考えたりすること(3項関係)によって、自身の感情に気づき、表現することができるようになってきた。

3. 人と関わることが苦手な児童への取り組み

 話しかけると答えることができるが、自分から話しかけるのが苦手な児童には、人と話したり、遊んだりすることが楽しいという経験を積むことが大事だと考えた。小グループ学習では段階を踏んで人との関わりをもてるようにした。自分から声をかけることが苦手な児童には、最初にすぐにこちらから声をかけたり、友達から声をかけてもらうようにした。最初はゲームに参加できなかった児童も、教師とだけはじゃんけんゲームができるようになり、次に、椅子に座ったままなら、ゲームに参加することができるようになってきた。

Ⅲ 成果と課題

 通級指導に通ってくる児童は、しかられたり、失敗をしたり、思うようにいかないことが多いという験をしている子が少なくない。個別学習・小集団学習では、まず「自己肯定感・自尊感情の回復」を目標に掲げた。そして、一緒に学習できる週に1回の数時間で失敗をさせないこと。ほめること、認めること、を支援方法とし、1番この子が必要としている支援は何か、それを常に意識しながら、指導を行ってきた。
 毎回視点を定めて記録を取り、行動観察と記録をもとに、次週の計画をたて、毎回の指導を行い、保護者、在籍校担任と連絡帳や毎回の指導の送り迎えのときに打ち合わせるなど、連携を深めることで、必要な支援を考えることができた。
 今後は、大学院での学びを活かし、専門性を磨き、アセスメントを生かした支援を行うこと、地域の専門機関との連携だけでなく、就労まで見越した縦のつながりを意識した連携を視野にいれながら「一人を大切にする」支援を行っていきたい。

キーワード:特別支援、自尊感情、場の設定