創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2009年第8回大会口頭発表抄録
口頭発表A-4

協同の学びを目指して~対話をもとにした授業づくり~

西中克之(創価大学教職大学院 大学院生)

はじめに

photo  『三人寄れば文殊の知恵』ということわざには、三人集まれば、一人で考えるより色々なアイデアが集まり良い知恵になるものだ、という意味がある。これは、そのまま学校教育にも当てはまるのではないかと常々考えていた。
 実際に学級担任として児童に携わるなかで、一斉教授ではなく、子どもたち同士が様々な考えを交流することで学びが深まるのではないか、と考えた。そこで、学びに対する意欲をもてるような授業スタイルを模索した研究テーマが、【対話をもとにした授業づくり】であった。今回の発表では、これまでの研究への取り組みと、課題と成果を振り返り、その上で今後の展望を示していきたい。

1. 担当学級の実態

 私が担当したのは小学4年生である。本学級の児童は、自分の考えを表すことのできる活発な学級であった。その一方で、友達の考えを聞いて自分の考えに反映させることは乏しい印象を受けた。授業においては、教師と一対一の授業になってしまうことが多く、友達の考えをもとにして自分の考えを構築し直すことが苦手という印象を受けた。

2. 育てたい児童像

 上記のような実態を受けて、本学級が目指す児童像として、①認め合える子 ②友だちの考えを受け止められる子 ③主体的に学ぶ子の 3点をあげた。これは、児童同士が関わりをもつことの良さを感じとる中で切磋琢磨しながら学びを深めてほしいという私の願いから打ち出したものである。

3. 研究の仮説

 児童同士の関わりを増やすことで、児童の学びがより深まり、三つの児童像に迫れると考えた。そこで、研究の仮説を【工夫した話し合い活動を設ければ活発な意見交換ができ,進んで学び合うことができるであろう。】と設定した。授業づくりでは、話し合い活動を工夫し、より活発な意見交換が生まれるような場をどのようにして作るかを中心にして研究を進めていった。

4. 対話を取り入れた授業づくり

 “話し合い”と言っても、様々な形態が考えられる。本学級では、話し合いをする経験が乏しいことから、まず一対一の対話を取り入れることにした。それは、一対一ならば、話す側と聞く側が明確になり混乱が少ないと考えたからである。対話したことをベースに授業の練り上げを行い、他者の考えを取り入れることで学びが深まった実感をもたせることを当面の目標とした。
 研究は主に国語と算数の授業で行った。具体的には①自分の考えを書き込むことのできるワークシートの活用 ②机を向き合って話し合うことの二つを毎時間行った。教材文に書き込みをしたり(国語)、図や絵などを自由に使ってワークシートに書き込んだりする(算数)ことで児童個々人の考えが明確になった。それを指差しながら説明し、相手と顔を突き合わせながら自分の考えを話したり友達の考えを聞いたりした。
 ワークシートは書き込んだまま黒板に貼り付け、それを全体に発表しながら様々な考え方を広げた(算数)。また、振り返りを日常的に行い、友達の考えで参考になったところを記述するようにした。

5. 成果と課題

 顔を突き合わせての対話は、相手が明確なこともあり、発言を回避することは難しい。これによって授業に緊張感が生まれ、学習を“自分ごと”として受け止められるようになった児童が増えた。また、友達の考えに触れることで、他者意識が育ち、少しずつ話を聞いて、自分の考えに反映させられるようになった。
 一方で、考えられない・書けない・話し合えない児童に対しての有効な手立てについては課題が残った。

6. 今後の展望

 対話を取り入れての授業は中学年の後半でも有効な手立てであった。今後は、よりはっきりした学習の目的をもたせること・個人の責任を明確にすることを両立させた協同での学びを構築していきたい。