日本の障害児教育は戦後60年、それ以前から数えて120年余の歴史を刻んできた。一般校での統合教育の取り組みや、障害種別に応じた障害児学級(支援学級)も増大し、障害の有無を超えた「共生教育」の進展も目覚しい。しかし、2007年から「特別支援教育の開始」により大きな転換期を迎えている。これまでの各種障害別に対応する「盲・聾・養護学校」として親しまれてきたネーミングが法律上消え、全て「特別支援学校」へと改名された。同時に、一般校に在籍する障害児(者)に対する教育活動も含めて「特別支援教育」と総称するようになった。この「特別支援」とは何を意味するのだろうか。この「特別」と「支援」の語が使われる理由と根拠は、一部の関係者以外の多くの一般市民には知られていない。また「支援教育」とは具体的にどういうものか?そもそも、なぜに国民の・人間の普遍的な権利であり義務であるはずの教育活動(義務教育)が「特別」なのか?強いては「障害児(者)のことは全て=特別」との新たな偏見や固定観念を人々の中に植えつけてはいないか等の疑問難問がつきない。WHOの新たな障害概念や、国連の人権条約の発効などの今日の社会状況を踏まえつつ、学校のみならず社会教育や福祉教育・生涯学習にわたる広い視点からより良い支援教育の在り方を再考したい。そこで本会では特に次の課題について討議したい。①誰の、何のための支援教育なのか?②支援教育を「特別なこと」でなく、「より一般化・普遍化させていく」には何が必要か?③支援教育に求められる「教師・教育者像」とは?④「支援教育コーディネーター」や「支援者」の役割と資質は何か?⑤一地域住民・一市民・そして一人間としてできることは何か?これらを本大会のテーマにある「人間という視座」に立って掘り下げていく。参加者の皆さんとの率直で活発な意見交換と有意義な研究交流のひとときを共にできることを心から期待している。
キーワード: 「共生支援」 「共育社会」 「人間福祉教育」