描写レヴューとは、アメリカで生まれた『子どもを描写(観る・観察)することを通して、その子の特質にせまっていく評価法』である。一人の子どもを、その学級内での動き・関心・学び方と考え方の特徴・他者との交流のしかたなどの項目に従って、観察したことを一人の描写者(発表者=担任)がエピソード(または事実)を描写するという描写レヴューは、その子のよりよい成長のために教師は何ができるかを示してくれる。この描写レヴューは、教師の力量形成の大きな力となると考えられる。描写レヴューを通して、学習や生活の中でのエピソードが積み重なった記録は、担任教師の印象や思いこみとは異なる、その子らしさを知る手がかりになる。このような資料をもとに、レヴュー(共同の話し合い)を行う。レヴューを重ねていくことで、互いに自由に発言できる人間関係が作られ、自分の範疇を超えた視点からの語り合いによって、子どもたちを観る目が養われていく。担任以外の人々と複数の目で、子どもを多角的に見ていくレヴューは、その子の長所や学び方の個性がはっきりとしてくる。話し合いの過程で教師のその子に対する教え方の自己点検につながり、学びの可能性を広げる方法やアプローチを考える場となる。最大の目的は、観察なしには到達できなかったレベルの発見をする(共有する)ことにある。これによって、教師の力量形成が促進される。この描写レヴューの実践で高めたいと考えている教師の力量とは、以下の通りである。
①「子どもの学び」を見とる力
② 記録をとる力
③ 教師自ら他者と関わる力
④ 学びを振り返り、修正していく力
教師の力量で、基盤になるのはなんと言っても人間性であると思う。児童の一人ひとりを理解する能力を身に付けるには、職場の仲間や保護者、教育に関わる全ての人を、豊かに理解することが大事になってくる。具体的なエピソードを通してのレヴューから、理論とは異なる見方が紡ぎ出され、また教職の複雑さ・子どもを理解することの奥深さに気づく可能性が広がる。教師の自己成長なしに、子どもの把握・見取りは難しいのではないかと考えている。
①自分の範疇を超えた観点からの話し合いにより、子どもを観る目を養う。
②教師自から他者と関わる力を養う。
③学びを振り返り、修正していく力を高める
①観察する視点としての「窓」を設定する。
・子どもの学びの速度と理解のしかた
・強い関心事(こだわり)
・コミュニケーションの仕方(他者との関わり)
②「窓」から観たその子らしさ、こだわり、特質に気づいていくための記録をとる。
・抽出児は、気になっている子・大人しくて丁寧に見ていく子とし、複数の見方を重ねていって、発見する。
・学びの過程で、他者(教師や友達)との交流によって、どのような直し・変化があったか観察する。
・テストでは分からない観察によって得られるレベルの発見から、子どもを見る。
③記録を基にレヴュー(共同の話し合い)を行う。
④レヴューから、その子に対して何をどう支援したらよいか見立て、手だてを考える。(検討)
⑤支援の仕方が適切だったか振り返り、記録をとる。(その子の変化のエピソードをつづる。)
①レヴューによって、本当に教師の力量(問題の所在であげた4つの力)が形成されるのか。
②観察の観点「窓」は、どのようにすれば適切なものとして、設定できるのか。
③多忙な教育現場で、レヴューの時間をどのように確保するか。