創価大学教育学会

創価大学教育学会>書庫>2008年第7回大会口頭発表抄録
口頭発表A3/教室B401

高齢者の学習と社会参加 その可能性
~行政の事例(葛飾区)からの考察~

創価大学教育学部講師  平井康章

はじめに

 65歳以上が人口の21%を超え、わが国は他国と比べものにならないスピードで「超高齢社会」に突入した。福祉・年金の将来等を考えると、「少子高齢化」の課題はその切実度をより増してきているといえる。
 若者が減り、高齢者が増大するという統計的側面だけで捉えると重苦しい将来展望しか描けないが、筆者は暗い側面ばかりではないと考える。本年3月まで葛飾区に勤務していた経験をふまえ、葛飾区の事例も紹介しながら、高齢者の学習と社会参加に焦点をあてながら、その可能性について考察していきたい。

1.「高齢者観」変換の必要性

 国連が人口統計の基準として65歳以上を老年人口としたのは、半世紀以上も前の1957年であるが、50年前まで遡るまでもなく、20~30年前の65歳に比べ、現在の65歳が知力・体力ともに大きく優っていることは多くの人が認めるところである。
 また生涯発達心理学など「生涯発達」の視点からの研究が進むにつれ、人生後半の加齢がすべてにおいて能力の低下につながるのではなく、結晶性知能(常識や判断力、理解力等)などは中年以降でも発達し維持されていくことが指摘され、アンチエイジングの取り組みにより、加齢による能力の低下を遅らせることも可能になってきている。
 このような状況をふまえ、「高齢者=社会的弱者」というような固定的な「高齢者観」は改めなければならない。

2.高齢者への学習機会提供の経過
   ~「福祉」と「教育」の狭間で~

 高齢者に対する学習機会の提供は「福祉」と「教育」の双方から行われてきた。対象を高齢者に限定して行う形態だけでいえば、福祉の部署がより中心になり担ってきたといえる。
 しかし、これまで福祉の部署が学習の機会を提供する際の基本的な「高齢者観」は「社会的弱者」であり、また提供する内容も現役をリタイヤした「余生」を過ごす人たちという認識のもとに想定され、余生を楽しく過ごしてもらうためのものが多くを占める傾向にあった。
 「教育(社会教育)」の側からも高齢者を対象とした学級・講座を提供することもあったが「福祉」との比率において少数であったことは否定できない。

3.高齢者の学習と社会参加
    ~事例から見えてきた可能性~

 福祉部署の事例であるが、2002年より新しい「高齢者観」のもとに高齢者の社会参加を目的としたセミナーの事例紹介を通しながら、高齢者の学習と社会参加、その可能性について考えていく。
 また学習者(高齢者)の可能性を拓く働きかけ、という教育の視点から事業を実施するのであれば、「教育」の部署がより中心的にかかわるべきであり、かつ高齢者という特性を考え保健・福祉の部署と連携して進めることの重要性を主張したい。

キーワード:高齢者観、生涯発達、社会参加