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創価大学教育学会>書庫>2008年第7回大会口頭発表抄録
口頭発表A2/教室B401

コミュニケーションを取ることが苦手だった男の子との信頼づくり
       ~私が実習校で経験したこと~

梅本佳恵(創価大学教育学部)

はじめに

 私は今年の4月から、東京教師養成塾の特別教育実習で、国立市の小学校に行かせていただいています。実習学年は5年生で,私のクラスには、生活指導上、学校でリストアップされている男児(T男)がいました。彼はコミュニケーションが不器用で、自分がうまくいかなかった時や、自分より弱いと決め付けた女の子と話す時に口が悪くなります。以前は手足も頻繁に出ていたようです。そんな彼が、私に対して反抗し始めたのは、1学期の終わりごろでした。私のことを「梅本」と呼んだり、「梅本の授業つまんない。・・先生(担任)の授業の方がいいのに」と、わざと私に聞こえるように言ってきたりしました。私も最初は黙っていましたが、次第に指導の必要性を感じるようになりました。しかし、どう指導していいか分からずに悩んでいました。

問題の経緯と私の対応

 1学期最後の私の授業実習は、体育でした。この時間は「体ほぐしの運動」をやらせていただきました。授業が始まって、最初の課題に取り組んでいる時、クラスのある女児が大声で泣き始めました。私は何があったか全く分からずに、その女児に駆け寄り、話を聞きました。その女児は、「T男にウザい、くさい、デブと言われた」と言って泣いていました。私は授業を進めなくてはならなかったので、その場は女児の話を聞くだけで精いっぱいでした。女児は次第にクールダウンし、途中から授業にも参加していました。
 中休みにもう一度女児から話を聞きました。すると、去年からずっとT男に悪口を言われていること、今までずっと我慢をしてきたこと、去年の担任の先生に言っても何もしてくれなかったことを、涙を流して話してくれました。彼女は、今までそうとう我慢をしてきたようで、この日にその我慢してきたものが一気にはち切れたような感じでした。私は女児の話を聞いて、T男にどんな指導をしようか考えていました。しかし、どうしていいか分からず、一旦担任の先生に相談しようとしました。そして、この日の帰りの会になって、また事件が起きました。T男が、また同じ女児に対して嫌がる言葉を言ったのです。女児はまた大泣きを始めました。T男は、帰りのあいさつを済ますと、そのまま帰ろうとしました。私は担任の先生の方を見ましたが、先生は何故かクラスにはいませんでした。私は、T男を呼びとめました。すると、「俺は何も悪いことなんてしていない、こいつ(女児)が勝手に泣いただけ」というようなことを言ったので、私も自分のボルテージが上がり、「人を泣かして、その態度はないだろ!」と、思わず怒鳴ってしましました。クラス中が、静まりかえりました。 T男は私のところへ寄ってきました。その女児も私の傍にいたので、2人で話し合いをさせようと思いましたが、2人の会話からは「お前が悪いんじゃ!」「勝手に泣く方が悪いだろ!」と火花が散るばかりでした。そこで私は、T男と二人で、児童会室で話すことにしました。 私がT男の話を聞く時に心がけたのは、「彼自身が悪いのではなく、その言葉が悪いんだ」、「私はT男を信頼しているから話しているんだよ」ということを伝えるということでした。5年生は夏休みの後半に、野外体験活動に行くことになっていました。ここでT男とこの女児が同じ班だということも私は知っていました。T男は以前、この女児と同じ班であることが嫌だと言ったことがありました。私はそのことを思い出し、「T君は自分がいけないことを言っているのは分かっているんだね」「野外活動を楽しく行くためにも、人の嫌がること言うのはやめようよ」と言いました。そして、「先生は、T君のこと信じてるから言っているんだよ」と、ストレートな言葉で伝えました。すると、T男は少し目の色を変えました。そして、「分かった」「努力してみる」と言いました。そして彼は帰っていきました。

おわりに

 その後、彼は私にもいろいろな話をしてくれるようになりました。彼が腕白なだけに、未だにトラブルは後をたちませんが、それでも毎回話をしていくことによって、私も彼も成長していると思います。