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創価大学教育学会>書庫>2015年 第14回大会研究発表抄録
研究発表C-1

児童の反省的思考と社会参加活動の関連について
 総合的な学習の時間の実践研究を通した一考察

藤永喜美子 (創価大学教職大学院教職研究科)

1.はじめに

これまで,総合的な学習の時間の授業実践を行う中で,指導者として子どもが主体的に学んでいくためにどのような手立てが有効かに焦点を当て研究を進めてきた。2014年度には,教職大学院における実習研究の一環として,実習研究校で総合的な学習の時間の授業実践をする機会を頂いた。地域を流れる川に目を向け,探究的な学びをしていくうちに,次第と自分たちにできることは何かという思いが芽生えた子どもがいた。

本研究では総合学習における探究的な学習を行うことにより,社会参加の意識が芽生えると仮定し,自己の実践を省察することによりその実態を明らかにしたい。

2.研究の内容

研究対象は都内にある公立小学校第4学年の児童48名(4年1組25名 4年2組23名)である。調査期間は平成26年9月から平成26年11月である。授業研究として実施した総合学習(単元名「Myリバー北浅川」)の授業実践から児童の探究的な学びのプロセスの実態を探る。自らの授業実践を省察的に検討するにあたり,探究的な学びにおける思考の方法として,ジョン・デューイが提唱した反省的思考の概念を整理する。藤井による解説では,反省的思考は「5つの側面あるいは局面」としてみること述べられている。それは,①示唆②知的整理③指導観念すなわち仮説④推論すること(狭義における)⑤(実際の,あるいは想像上での)行動による仮説の検証である。これまでの実践を振り返り,探究的な学習が順序性のあるものとしてみることは難しいと考え,本研究では藤井による解説をもとに自己の実践を省察する。手順としては,自己の実践にみる反省的思考の5つの側面について単元指導計画をもとに表に整理し考察する。また,児童が発表後に書いた作文を,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTAと表記)を用いて分析する。

3.結果

自己の実践を反省的思考の5つの側面から見取ることにより,指導観念(仮説)や推論の側面が見出せないことが明らかとなった。児童に仮説を明確に持たせる活動を取り入れていなかったことに連動し,仮説の現実性や確実性を高めようとする思考が促されなかったといえる。児童の作文をM-GTAを用いて分析した結果,9つの概念から〔理解〕〔感情〕〔次への課題〕〔価値付け〕の4つのカテゴリーが生成された。小単元3までの学習活動を終え,調べたことを交流したことで,児童は初めて知ったことや分かったことがあったこと自覚をし,初めて知ることへの驚きや自分の思いを持った。さらには自分ができることを考えたり,川の清掃活動や川に関する取り組みの良さに気付いたりする児童がいることも明らかになった。

4.考察

児童にとって継続的且つ連続性のある社会参加を実現するためには,児童自身が自分の身の回りの環境や地域の場に課題を見出すことから始まる。課題に関する情報を集めたり,調べたりして事実を認識し,それを他者に伝えたいという思いから表現する。その探究における思考のサイクルを繰り返す中で自分には何ができるか,自分ができる行動を起こしたいという思いは自発的に生まれるといえる。言い換えると,探究の過程で明らかになったことから,自分も行動してみよう,こうすれば身の回りの環境が良くなるという仮説が児童の中で成り立つのではないかと考える。

≪引用・参考文献≫
藤井千春(2010)ジョン・デューイの経験主義哲学における思考論-知性的な思考の構造的解明-

キーワード:反省的思考、社会参加、総合的な学習の時間