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創価大学教育学会>書庫>2015年 第14回大会研究発表抄録
研究発表B-1

めあてをもって学び合う力を身に付ける体育学習の在り方に関する研究
 ―体育科におけるアクティブ・ラーニングの追究を通して―

本間忠明 (創価大学教職大学院)

1 問題と目的

平成20年に改訂された小学校学習指導要領の体育科の目標には「心と体と一体としてとらえ、適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てるとともに健康の保持増進と体力の向上を図り、楽しく明るい生活を営む態度を育てる」とされている。

体育・運動好きの児童を育てるには、小学校における体育科の授業の充実が必要である。小学校学習指導要領体育編の解説には、「生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てる」ためには、小学校段階から運動に対する興味・関心をもったり自ら運動したりする意欲をもったりすること、さらには、仲間と仲良く運動しながら運動の楽しさや喜びを味わいながら運動することが求められている。

また、平成26年度11月の文部科学大臣の中央教育審議会に対する諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」において、「『何を教えるか』という知識の質や量の改善はもちろんのこと、『どのように学ぶか』という、学びの質や深まりを重視することが必要であり、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)や、そのための指導の方法等を充実させていく必要があります。」とある。これらを実現していくためには、児童の能力や適正、興味や関心等に応じて、運動の楽しさや喜びを味わい、自ら考えたり工夫したりしながら運動の課題を解決するなどの主体的な学習と、児童が、仲間と仲良く運動をすることや、学び合いを中心とした協働的な学習が重要となると考えられる。

本研究は、課題発見と解決に向けての主体的な学習のための「めあて学習」と、協働的な学習のための「学び合い」の二つに焦点を当て研究を進めることで、児童の体力の向上の一翼を担うことのできる体育科の学習を提案する。

2 研究の方法

(1)対象、時期、方法

平成27年9、10月に都内公立小学校第6学年と第5学年の児童104名を対象に、体つくり運動領域の授業(各全5時間)及び質問紙調査を実施した。

(2)授業実践と授業づくりの視点

授業実践として、小学校高学年を対象に体つくり運動領域の体力を高める運動について、授業実践を行った。授業では、研究のテーマであるめあてと学び合いについての手立てを講じながら授業を実践した。

第6学年の授業では、めあてをもたせるための工夫として、自己評価カードを使い、毎時間の振り返りを行った。学び合いを広げるための工夫として、運動や動きのポイントやこつを掲示物や学習資料で明示することとした。第5学年の授業では、第6学年の授業を受け、より学び合いによる協働的な学習に焦点を当て、知識構成型ジグソー法を取り入れた授業を行った。

(3)分析方法の検討

授業の前後に実施した質問紙調査(13項目4件法)と毎時間の授業に児童が記入した学習カードの内容(4件法及び自由記述)から分析を行う。

3 結果と考察

授業前後の自己評価カードの数値的な振り返りを、オリエンテーション後の第2時目の結果と最後の第5時目の結果をt検定による分析を行った。その結果、第6学年、第5学年ともに、児童は体力的な高まりを実感している結果となった(Table 1)。関わりに関する項目についても同様の分析を行うと、児童が関わりの向上を示す結果となった(Table 2)。

当日は、体力の高まりと友達同士の関わりとの関係や、質問紙調査の分析も発表することとしたい。

第6学年 学習カード「体力が高まった」/第5学年 学習カード「友達との関わり」

キーワード:アクティブ・ラーニング、めあて学習、学び合い、知識構成型ジグソー法