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創価大学教育学会>書庫>2012年 第11回大会口頭発表抄録
口頭発表B-3

『推理式指導読方』(戸田城外著)に基づく説明文教材研究の視点抽出の試み

土居 正博/荒井 英樹(創価大学教職大学院 教職研究科)

Ⅰ研究の背景

本研究は、創価大学教職大学院の授業、「人間教育事例分析研究(担当:吉川)」にて、川島の「解析論考戸田城外著『推理式指導読方』」(以下、『指導読方』)から、その国語科教材分析のち密さ、合理性を学んだことに端を発する。なお、本研究で研究対象としたのは、戸田城外著、昭和13年改版第25版『推理式指導読方』である。

Ⅱ研究の目的と問題の所在

『指導読方』には、牧口常三郎の「序」、戸田城外の「自序・文段の研究について」が記載されている。特に戸田が記した「自序・文段の研究について」からは、『指導読方』の中心となるテーマが示されていると考える。それは、「参考書の価値を教師の代用の位置に引き上げんとする意図のもとに・・・」という叙述や「我々は国語を学ぶ際に、最もよく此の文段の研究に注意し、・・・」といった叙述から把握することができる。

川島の研究は、大学受験等における文章表現指導の立場から、「項目秩序の体系性」や「解説の合理的明解さ」、「本文と項目相互の関連性」を分析や現代の教科書ガイド等との比較を通して検証したものである。それに対して本研究は、小学校教師としての立場から、戸田城外の「説明文教材研究の視点」を抽出することを目的とする。

その抽出の方法は主に2つである。1つ目が「教材文と『指導読方』との照合」である。2つ目が「教科書ガイド、指導書との比較」である。

Ⅲ 教材研究の視点の抽出の試み

(1)「教材文と『指導読方』との照合」から

まず試みたことは、「教材の選択」である。手に入れることができた『指導読方』(小学五年前期用)より「飛行機の発明」という作品に決定した。この作品に決定した理由は、叙述が平易で、現在教科書で扱われている教材文とも比較が容易なのではないかと考えたからである。

その上で、「飛行機の発明」本文と『指導読方』の解説を照合し、川島論文の分析の仕方を参考にしながら、教材研究の視点抽出を試みた。

(2)「教科書ガイド、指導書との比較」から

はじめに、「飛行機の発明」と類似する、現在教科書で扱われている教材の選択をした。そして、「アーチ橋の進歩」(教育出版・四年上)を選択した。

次に、それに付随して、『指導読方』と比較する教科書ガイドと指導書を決定した。教科書ガイドについては、『教科書ガイド 小学国語 教育出版版 4年上下』(新興出版社)とし、指導書については、教育出版のものを使用することとした。

Ⅳ今後の課題

今後の課題としては以下の3つの点が挙げられる。

(1)人間教育と教材研究のつながりを見出すこと

本研究は「子どもたちに力をつけること」も人間教育の一位相であるとの考えを背景に、『指導読方』にたどり着き、そして教材研究に着目するに至った。人間教育と教材研究は一見距離を感じさせるが、人間教育の歴史には『指導読方』が厳然と存在している。人間教育としての教材研究の視点を見出していくことが基盤である。

(2)研究成果を学校現場で実践し、検証すること

(1)をめざしていくうえでは学校における実践研究が肝要である。今後は現場での実践、検証が必要となる。

(3)『指導読方』に対する歴史的研究の必要性

『指導読方』の背景や創価教育学との関連などに関する調査や考察が不足している面が多々ある。今後、本学「創価教育研究所」と連携を図りつつ歴史的意義を深めていく所存である。

キーワード:推理式指導読方、教材研究、人間教育

≪参考文献≫
・戸田城外『推理式指導読方』巻九、日本小学館、1938年。
・川島清「戸田城外著『推理式指導読方』解析」『育英短期大学研究紀要』20, pp.25-41, 2003年。
・川島清「解析論考 戸田城外著『推理式指導読方』」、『創価教育研究』、第2号、pp.55-107 2003年。