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創価大学教育学会>書庫>2011年 第10回大会口頭発表抄録
口頭発表A-1

特別支援教育関係ボランティアの可能性
 ―発達障害児と関わる力を高めるための方途―

土居 正博(創価大学教職大学院 院生)

Ⅰ はじめに

「学生ボランティア」、「学校インターンシップ」、「学習支援ボランティア」(以下、「学生ボランティア」で統一する)など、教職を志す大学生、大学院生は、さまざまな名称で、学校でボランティアとして教育活動に関わっている。これらの、さまざまな名称で呼ばれる学生ボランティアについては、ほとんどの場合が、学校現場において「特別支援教育」に関わることになる。つまり、「特別支援を要する子ども」と関わることが多い。そのため、「学生ボランティア」はそのほとんどが、実質的には「特別支援教育関係ボランティア」(この名称は、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課2007による)として扱われているのである。

筆者自身も約二年半、小学校で「学生ボランティア」を行っている。主な内容は、特別支援を要する子どもの在籍するクラスにアシスタントティーチャーとして入り、その子どもを中心に学習支援をする、というものである。本研究は、その約二年半のボランティアの経験を通して見出した、ボランティアを行っていく上での問題点とその解決策の考察である。学生ボランティアを行うことによる教職での利点を改めてまとめることで、その利点を今後筆者自身が、ボランティアを行う際や教職に就く際、またほかの学生のボランティア活動に生かせることを目指している。

Ⅱ 問題の所在

すでに述べたように、学生ボランティアとして学校現場に行くと、特別支援を要する子どもと接する機会が非常に多くなる。そのため、特別支援教育や発達障害など専門的な知識を持たないで行うと、非常に苦労することになる。また、ボランティアの中で発達障害児と接したり、学習指導をしたりするにあたって、担任の教師との連携不足や自らの子どもとの関わりや指導がどのようであったかを客観視したり、評価される機会の不足が、課題となる。

Ⅲ 学生ボランティアを行う利点

学生ボランティアを行う長所は、単に学校現場においての指導が助かるということだけではない。私は、学生ボランティアの最大の利点として、学生自身の「特別支援を要する子どもと関わる力を高める機会を持つことができる」ということを強調したい。

Ⅳ プロセスレコードの活用

ボランティアに入るクラスの担任の教師と連携を図ったり、自分の子どもとの関わりを見つめたりする上で欠かすことのできないものが「ボランティアの記録」である。この記録の一つの方法が「プロセスレコード」である。プロセスレコードは元々、看護師のための、患者と看護者の相互作用過程を明らかにし、実践に役立たせるために活用されている記録であり、相互作用過程を明らかにするため、看護場面を再構成する方法として、E.ウィーデンバックやE.ペプロウによって提唱された。

プロセスレコードと子どもの言動の単なる記録の違いは、記録者の「感情」が書かれているということである。つまり、「主観的」だということである。自分の感情や主観を見て取れる記録だからこそ、客観的な記録より自己の内面にかかわる深層を探ることができる。

Ⅴ スーパービジョン

スーパービジョンとは、記録を元に大学教員から専門的指導、助言を受けることである。学生が子どもとの関わりの記録を取り、それを検討し、関わりを高めていくには、担任の教師や管理職に加えて大学教員から指導を受けることが不可欠だと考える。

Ⅵ まとめ

学生ボランティアを行うことにより、特別支援を要する子どもとの関わりを高めることができる。そしてその利点を最大限生かすには、記録を取ることが不可欠であり、その記録法としてプロセスレコードを提案した。また、それを元に大学教員からのスーパービジョンを受けることが重要だと考える。

キーワード:学生ボランティア、プロセスレコード、スーパービジョン