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創価大学教育学会>書庫>2010年 第9回大会口頭発表抄録
口頭発表B-4

学校,家庭が連関した道徳教育カリキュラム

蜂須賀 勲(創価大学教職大学院 教職研究科)

Ⅰ 研究の目的

 近年の,教育を取り巻く環境の変化,子どものモラルや学ぶ意欲の低下,家庭や地域の教育力の低下などの社会的背景から,平成18年12月22日に公布・施行された新教育基本法では,「教育の方針」が「教育の目標」に変わり,その第一項に,「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに健やかな身体を養うこと」とある。

 「豊かな情操と道徳心を培う」には,道徳教育が重要であり,新学習指導要領においても,「学校における道徳教育は,道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うものであり,道徳の時間はもとより,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動のそれぞれの特質に応じて,児童の発達の段階を考慮して,適切な指導を行わなければならない。」(小学校学習指導要領「第1章総則」の「第1 教育課程編成の一般方針」の2前段)とされている。

 さらに,平成20年1月の中教審答申の「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」では,道徳教育における家庭と学校の連携について言及している。

 そこで,本研究では,道徳性育成の視点からとらえた改正教育基本法を読み解き,学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育と家庭における道徳教育を連関させた道徳教育のカリキュラムづくりを目指す。

Ⅱ 研究の方法

1 道徳性育成の視点からとらえた教育基本法の変遷について,参考文献を読み解く。
2 抽出校の学校行事や特別活動のねらいを道徳の内容項目で分類・集計する。
3 保護者にアンケートを依頼し,道徳の内容項目上で,家庭でも重視していることを分類・集計する。
4 上記2,3の集計結果をもとに,道徳の時間で補充・深化・統合すべき内容項目を踏まえたカリキュラムづくりを目指す。

Ⅲ 研究の内容

1 研究の視点

(1)教育基本法における道徳教育の変遷
(2)改正教育基本法が期待する道徳教育
(3)学校教育における道徳性育成の視点
(4)家庭における道徳教育

2 研究の仮説

(1)学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育
 各教科の単元ごとのねらいに関連した道徳の年間指導計画は作成されている。しかし,学校行事や特別活動のねらいまで加味した道徳の年間指導計画を,作成することは難しい。また、それらのねらいを道徳の内容項目で分類した場合にも,そのすべてを網羅しているとは考えにくい。そこで,道徳の内容項目の偏りを分類し,カリキュラムづくりに生かす。
(2)家庭で行っている道徳の内容項目
 家庭で行っている道徳的な教育を,道徳の内容項目で分類した場合も,そのすべてを網羅しているは考えにくい。そこで,道徳の内容項目の偏りを分類し,カリキュラムづくりに生かす。

Ⅳ 結果及び考察

1 学校教育における道徳性育成の視点

 学校行事や特別活動のねらいを,道徳の内容項目で分類した場合に,偏りが見られるのは当然のこととして,道徳の時間や特別活動で,足りない内容項目を補充することができるような道徳教育のカリキュラムを作成すれば,学校で行う道徳教育が,より「教育活動全体を通じて行う」ものになると考える。

2 家庭が重視する道徳の内容項目

 家庭での道徳教育を,道徳の内容項目で分類することは,道徳教育を形成する上で,意義深いことであると考える。さらにその結果を踏まえ,各教科・領域と連関させた道徳教育のカリキュラムづくりをすれば,家庭と学校が連携した道徳教育が推進できると考える。

キーワード:教育基本法,道徳教育,家庭教育